ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

伊豆の国市子ども創作能~望月 前市長さんに感謝の集い

2013-05-20 16:10:35 | 能楽
昨日は伊豆の伊東市で薪能に出演、今日は沼津で結婚式への出演、そうして伊豆の国市で子ども能の稽古、と、伊豆三昧の2日間でした~。

で、この日の一番のニュースは、前伊豆の国市長の望月正和さんをお招きしての「感謝の集い」の開催でした。

望月さんは市町村合併によって伊豆の国市となる以前の旧・大仁町時代の町長さんで、その当時の14年前に大仁町のイベントの一環として、望月町長さんや、大仁町の有力者の方々のご尽力によって、いま ぬえが指導する「子ども創作能」が誕生したのでした。ぬえがこれに携わって すでに14年か~。その後伊豆の国市となってからも望月さんは市長さんとして、子ども能を支えてくださいました。

伊豆の国市の「子ども創作能」は、新作の台本を使った能形式の創作舞台で、試み自体が大変珍しいし、それが14年間も継続して上演され続けている、というのも日本中でほかに例がないと思います。そうして、14年間の間に子ども能自体も成長を遂げて、誰も成し得ないレベルにまで到達しています。子どもたちは最初はチャンバラを楽しみたいだけに参加したりするんですけれども、だんだんと友達が増えてきたり、舞台の中でお役を全うする、という責任や、それを成功させたときの達成感を得て、次の目標にチャレンジしてゆきます。。こうして ぬえもどんどん演技のハードルを上げていって。。いま、この街の小学生たちに ぬえは、能楽師と同等のレベルの舞を舞うことを要求したりしています。

活動の幅も広がって行って、昨年からは鎌倉や沼津でも公演を持つようになりました。それから、単に舞台で上演するだけでなく、子どもたちに郷土の歴史を学ぶ機会を持ったり、上演前に開場となる寺社に参詣したり、舞台の清掃をしたり。。いろいろな経験をさせるようにしていますが、これも14年間も稽古を続けてきた中ででだんだんと積み重ねてきたものです。

こうして発展してきた伊豆の国市の子ども創作能ですが、先日 伊豆の国市の市長さんが交代されまして、望月さんは市政から離れることになりました。そこでこの日、子ども能の稽古の前に、望月さんをお招きして、子どもたちから感謝の言葉をお伝えすることにしました。

子どもたちを代表して感謝の言葉を伝えたのは、6人の兄弟姉妹がある中で(!)、なんと5人までも子ども能に参加したIさんのおうちから リカちゃん(5年生)とタカラくん(2年生)の二人。。と、ここまでは ぬえが人選して、あらかじめお願いしておいたのですが、なんと! 二人は自作の感謝の作文を暗記してきていて、文章を読まずに感謝の言葉を伝えたのでした。これは驚きました。ぬえの期待以上のことを、いつも子どもたちは見せてくれますが、またしても やられた~~(*^。^*)

そのうえ、このとき読み上げられた感謝の作文が大変良いもので感動的でした。せっかくだからご紹介しちゃいましょう!



望月先生、子供能はとっても楽しいです。みんなでたくさん練習をして舞台で能をした後は充実した気持ちでいっぱいになります。大仁神社や鎌倉などいろんな所でしました。素晴らしい経験ができ嬉しかったです。能は日本の素晴らしい宝物と思います。能もよかったですが、いい先生と知り合い、たくさんの友達が出来た事もよかったです。日々の学校生活も楽しくなりました。伊豆の国市に生まれてよかったです。望月先生のおかげと感謝しています。本当にありがとうございます。 (学校名)5年 I・リカ

望月先生、子供能は、楽しいです。これからも頑張ります。 (学校名)2年 I・タカラ

う~ん、引っ込み思案だと思っていた(現にママがそう思って子ども能に参加させたらしい)リカちゃん、いつの間にかこんなに立派な文章を書けるようになって。。タカラは低学年ながら子ども能でも人一倍大きい声で地謡を謡える頑張り屋さんなので、こちらは安心して見ていました。

望月さんからも、継続することの大切さについて子どもたちにお話しを頂きました。子ども能が発足した当時、伊豆でもあちこちでいろんな新しい試みが行われたのですが、その中で現在でも続けられている事業はごく僅かなのだとか。能も600年続けて、今の姿にまで研ぎ澄まされてきたのだし、前述のように14年かけて子ども能が発展したことを思うと、続けることの大切さ。。そして難しさに今さらながら感慨深いものがありますね。子ども能だって一時は参加者が10名しかいない時期だってありましたもの。







ついで、子どもたちから感謝の寄せ書きと花束を贈ってもらいました。

と、ここで、これは ぬえの計画で、この日参列された 子ども能の関係者。。元・大仁町の教育長さんだった遠藤宏さんと、先日 伊豆の国市の市議に就任された内田隆久さんにもサプライズで寄せ書きと花束をお贈りさせて頂きました。

お二人は望月さんとともに子ども能を発足させた14年前から、同じくずう~~っと子ども能のために尽力、まさに奔走しながらご支援頂いております。数年前からは「伊豆の国市 能友の会」を結成されて、子ども能の主宰団体となってくださるばかりでなく、市民に能を普及宣伝してくださったり、観光の中に能を取り入れてくださったり、と、能楽界から見ても頭の下がる活動を幅広く展開してくださっています。

お二人は今後も子ども能のためにお力を傾けてくださるのですが、望月さんが市長を退いたこの機会に、同じく14年間の感謝をお伝えすることに致しました。



お二人はやはりご自分たちにまで感謝のしるしが贈られるとは想定外だった模様。サプライズは成功です。しめしめ。

さてこうしてセレモニーが終わったところで会場外のロビーに場所を移して(ホールの中は飲食禁止なので)、ジュースとお菓子で立食パーティーとなりました。わいわいがやがや。



伊豆の、この子どもたち、やっぱり幸せだと思います。先日は感謝をご両親に伝えることを子どもたちに課しましたが、この日は支えてくださる関係者へ感謝を伝えることができました。これからは新しい市長さんのもとで次のステップに向けて進んで行くことになります。さあさ、夏の公演に向けて、新作の『鵺』(古典の能の『鵺』とは別の新作)の稽古、がんばってください~