ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第14次支援活動<気仙沼>(その15)~オレンジのメンバーと飲み会!

2013-07-14 01:17:30 | 能楽の心と癒しプロジェクト
宿に到着して、すぐに「ネットワークオレンジ」のメンバーに電話してその旨を告げると、ほどなくお迎えに来てくださり、近所のお店に飲みに行きました~。

ええと、再度確認しますと、今回の活動の主な目的は「ネットワークオレンジ」さんの新拠点・「東新城オレンジ」の落成式への出演なのであって、その当日。。5月25日には笛のTさんの都合がつかず、ぬえだけが紋付と裃を持って往復夜行バスの弾丸ツアーで参加させて頂いたのでした。その後、あらためて、落成式に近い日を選んで落成祝いの装束能をやろう、という話になって、この日はそのために改めて気仙沼に赴いたのでした。しかしせっかく気仙沼に行く機会ですし、オレンジさんでの上演だけでなく、ぜひほかの場所でも活動させて頂こう、ということで、飛び込みで活動の受け入れをお願いしたのが、さきほどお邪魔した鹿折復幸マルシェさんです。

25日の東新城オレンジの落成式の日は、美厚さんのビジョンを聞いて感銘を受けたりしましたが、同じ日に鹿折マルシェさんに公演ポスターを貼らせて頂きに参上した折、商店のみなさんと長く話をさせて頂いて共徳丸についての目新しい意見を聞いたり、この公演当日も鹿折の復興についての青写真を垣間見る機会があったり。。さらに登米市や志津川でも貴重なお話しを伺って。オレンジさんとマルシェさんと、今回は2カ所でしか活動をしなかった割にはなんだか刺激的な旅ではあります。

そうしてこの夜は「飲みに行こうよ~」という ぬえの提案で、オレンジのメンバーさんが会場をセットしてくださったのでした。

これがまた。最初は、3月の活動ですっかり「気仙沼ホルモン」に目覚めた ぬえが、そのおいしいお店をリクエストしていたのですが、ほどなく季節が移って、なにやら気仙沼方面から盛んに「初ガツオ」の便りが聞こえてきます。。それで、このオレンジさんとの電話での打ち合わせの際にこの飲み会の話にもなって、ぬえから「気仙沼ホルモンを食べたい、って言ったけど、何ですか?初ガツオが上がったんですって~?」と聞いたところ、案の定オレンジさんでも「この初ガツオの時期にわざわざそれを外してホルモン?」と話題になっていたんですって~。(笑)

そゆわけで、急遽お店が変更になって、おいしいお魚を食べる会になりました~。思えば ぬえが活動を開始したキッカケが震災前の学校公演で石巻小や気仙沼の新月中にお邪魔したこと。その時の子どもたちの鑑賞態度とか、熱気、それから礼儀正しさがとても印象に残って、そうしたら震災が起こってしまって。あの子たちは大丈夫かなあ、と心配になって震災の3ヶ月後に石巻や気仙沼を一人で訪れたのでした。でも、学校公演で気仙沼を訪れた時はちょうど「戻りガツオ」の季節でして。それとは知らず、三々五々、夕食を摂りに出かけた能楽師のうち、ぬえを含めてカツオを食べたグループは、あまりの美味に衝撃を受けてしまいました。これも気仙沼が ぬえの中で印象深い土地になった理由のひとつなのは否めないな~。

震災後に気仙沼で活動を始めてから、もう2年になりますが、その後「戻りガツオ」は一度も食べていません。その時期はちょうど東京でも舞台が多い時期なので、どうしても東北に来るまとまった日が取れないのです。。この日は「戻りガツオ」ではなく「初ガツオ」の時期で、おいしい魚料理を満喫させて頂きました~。。でも、やっぱり「戻りガツオ」にはかなわないかも。。

そうそう、この飲み会で最も驚いたのは、オレンジさんのスタッフの若い男の子Sくんが、な~んと!「ボク、魚が食べられないんです。。」とカミングアウトしたこと。衝撃。かたや一夜の「戻りガツオ」との出会いで人生が変わったようにそれを追い求める者があれば、かたや気仙沼で生まれ育ち、海の幸に不自由なく暮らしながら、「これ、キライ」という人がいるとは。ああ、神様ってイジワル。

「え?魚食べられない。。? 。。その、手元にあるお皿は。。それ、焼き魚じゃないの?」「あ、これですか。。? これ、ナスです」

この会話でブチ切れた ぬえ。「。。キミ、ホントは魚市場が復興しなくてもいいんじゃないか、って思ってるだろう!」「え。。?? いや、その、そんな、ね。。」 。。頼むから明確に否定してくれ。激怒するかな、と思ってわざと振ったんだから(笑)。

ま、こうして爆笑のうちに夜も更けまして、翌日の東新城オレンジでの公演に備えて「ネットワークオレンジ」さんの関係者ともお別れして、宿に戻って休みました。考えてみれば前夜から、稽古のあと深夜走行、仙台で休憩はしたけれど ほとんど眠らないでいましたが、不思議と疲れはない ぬえでした。もともとあんまり眠らないんですけどね、ぬえ。