わたしに朝風が吹いて来る。それを感じている。さわやかな風を感じている。
感じていられるわたしがいる。そういうわたしを愛しみたくなる。
そうすることができる条件がすべて巧く整えられていたからだろうが、それでもなお風を感じられるわたしという存在は稀な存在であろう。
それをそう感じることができない状況をたくさんたくさん潜り抜けて、いまここに来て、安息の息を吸っている。
まもなく午前9時になる。外気温28℃。カンカン照りではない。庭先に、姫林檎が小さな実をつけている。透かし百合が空に向かって微笑んでいる。