「時に憩う」 良寛
薪を担うて 翠岑を下る
翠岑 路は平らかならず
時に憩う 長松の下
静かに聞く 春禽の声
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翠岑(すいしん): 新緑の春の山々。青々とした峰。
春禽(しゅんきん):春の小鳥。鳴いているのは鴬だろうか。鴬以外にもたくさんの小鳥たちが鳴いているかもしれぬ。
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良寛様は禅者である。五合庵に住んでおられる。畳一間と狭い炊事場と土間しかない狭い家である。禅者は乞食者である。近隣を回って法を説いて、食べ物を人に乞うて暮らしている。今日は薪を山に拾いに行かれたようだ。
拾った薪を背中に担いで春の山道を降りて来られた。山道は上りが当て下りがあって、平らかではないので、(お年もお年なので)(痩せ細って枯木然としておられたので)、へとへとになられたようだ。背負っている薪を、大きな松の木の根元に下ろして、しばらく休憩に及ばれた。汗を拭いていると、春風の向こうから静かに、春の小鳥の鳴き声が聞こえて来た。禅者良寛様の素朴な無欲な暮らしぶりが見えて来る。
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今日は大好きな良寛様の漢詩を読んでみました。
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無欲な禅者には、小鳥の声を聞くことが春の楽しみになるらしい。良寛様は国上山の中腹の五合庵に14年住まわれて、74歳で他界された。仏道を歩まれながら、手鞠突き、隠れん坊、和歌、漢詩、書にもすぐれておられた。