わたしは赤ちゃんが好きだ。(誰でもだろうけど)
*
で、近寄って行って、乳母車の中を覗き込む。
*
赤ちゃんのお母さんは、身構える。危険到来と感じたのだろう。
*
そりゃそうだろう、醜い男の顔はどうみても人攫いの顔だ。
*
すやすや眠っている赤ちゃんもいるが、目を覚ましているのもいる。
*
どっちも可愛いのだが、目を覚ましているのその目の真ん前に醜悪な人攫いの顔が見えたが最後、赤ちゃんは火がついたように泣き出してしまう。
*
わたしはごめんごめんを言って逃げ去らねばならない。
*
目を瞑ってすやすや寝ている赤ちゃんが、愛らしい赤ちゃんの顔じゃなくて、老人の顔をしていることがある。たまにある。
*
前世の顔を引き摺ったままにしているからだ。(と、わたしは判断してしまう)中途半端にしか脱皮ができていない蛇に似ている。
*
あ、この赤ちゃんは「人間やり直し」をさせられているんだな、と直感してしまう。(この老爺の直感は当てにならないのだが)
*
一度二度ではない。こんなふうに感じることがよくある。
*
前世の顔を引き摺っている赤ちゃんが、人間道再生を果たして、よろこんでいたり悲しがったりしている。
*
そういうこのわたしも、そうやって再生を果たして赤ちゃんをしていたのだろう、きっと。
*
そんな再生を見るためにわざわざ近付いて行って赤ちゃんを見ているのではない。赤ちゃんは可愛いから見ているのだけど。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます