「まだ足りていない」は言えないはず。

さようならをするときが来るんだよね。まちがいなく。いままでは人を見送ってきたけれど、こんどは見送られるんだよね。さようならさようならと手を振ってお別れをする。みんなに世話になったね、ありがとうありがとう、やさしくしていただいた、おかげさまで今日を迎えることができたよ、僕も手を振る。その日がもうすぐ。その日を思うようになった。強く意識するようになった。

欲張りはしないでいいと思う。そう言い聞かせる。これまでをこうして助けられてきたんだから。これまでを手厚く守ってもらってきたんだから。これ以上は言わないようにしておきたい。「まだまだ足りていない」は言えないはず。足りているはず。十分に足りているはず。