ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマンの新作。
ボストン市庁舎に訪れる人々の事情は人それぞれ。
それらの事情に可能な限り応えようとする市の職員たち。
これまでの作風の通り、取材対象に寄り添いつつ現場を淡々と押さえていく。
登場するのはボランティアの現場から、交通規制センター、交通罰則のやりとり現場、などなど。
驚き! は治安の悪い地区に「大麻」の店を許可するかしないかの公聴会現場(20分以上)
(ボストン市からの指示でこうした公聴会が複数回行われている)
この公聴会で象徴的だと感じたのが、実に多民族国家アメリカらしく、個々人がはっきり意見を言うこと。
店がもたらす雇用というポジティブ面の一方、店まわりでのトラブルを心配するネガ面などを議論。
この臨場感たるや、ドキュメンタリーの真髄!
市の話なので最も登場するのはボストン市長なのだが、民意を拾い議論を尽くし解決策に至ろうという彼の一貫したリベラリズムが強く印象に残る。
市長は何度となく人々に説く。
「 ボストニアン が集結し ボストン市 から始め、全国に広げていけば良い」
(国では出来ないことでさえ)
こうした議論そして全体を通して浮かび上がってくるのが、ちゃんと機能している「民主主義」
改めて「民主主義」のあり方とは何か、を学び理解する 4時間34分 なのだ!
今のアメリカはマスコミでよく指摘されるように「分断」が進行している部分も、確かにある。
日本ではほとんど話題にならないが アメリカ議会襲撃事件 は 1年後改めて大きく報道されている。
だが一方でこのボストンのように、民主主義をよりよく機能させるべく日々奮闘している街も確かに存在する。
91才のワイズマンはボストン出身だそうで、自分の故郷への愛情がシーンごとに浮かび上がってくる。
ちょっとしたボストンの風景からさえも、それを感じ取れるのも面白い。
結論:ワイズマンの新作は、「民主主義」のあり方とは何か、を改めて学び理解できる強力なパワーを放つドキュメンタリー!