アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

「前」は、前なのか後なのか?

2015年01月17日 | Weblog
 俵万智さんのご子息(小学5年生)の言葉から、「前」という意味を考えさせられました。

 「先生は、お話を聞くときは前を向きなさいっていつも言うんだよねぇー」
 「あなたがキョロキョロよそみばかりしているからでしょ!」
 「ぼくは…ぼくが向いている方が前なんだよねぇ…」

 なるほど…!これは真理かも。
 広辞苑では、「前は目方(まえ)」だと。目が向いている方(目方)が「前」。つまり、万智さんの息子さんの言うとおり。未熟ながらいっぱしの蘊蓄屋を気取っている私が、10歳の子に、「前」を教えられるとは思いませんでした。てっきり、「正面にあたるところが前」だと思っていましたよ。もっとも、これも間違いではないのですがね。

 静さん(白川静師匠)は、「前という字は、止と舟と刀」としています。旅立つ前には、盤(舟と書きますが、早い話が桶。舟の形ではない)で足(止)を洗い、刀で足の指の爪を切りそろえた…。現在使われている、「前」の空間的な意味とは少々離れている。その後、「すすむ、まえ」の意味で用いられるようになってきたという。

 時間的な意味の「前」は、「さき、むかし」。空間的には未来の意味で、時間的には過去の意味…。
 「前のことをくよくよ考えるな!前を見ろ!」この励まし…妙なようで妙じゃない…。