声楽や管楽器は息を使い音を出します。
弦楽器は直接音を出すのは弓です。
左手は弦を押さえ音程を作り出し、右手は弓を持ち弦をこすります。
その弓の当て方で音の良し悪しが決まるようです。どこに当てるとか細かなことはあるようですが、最初に必要なことは弓に腕の重みを載せられるようにすること。
左手で速いパッセージを頑張って動かせたとしても、その音を届けるのは右手の役割です。
さてさてピアノはと言うと、音程を作るのはピアノ自体がしてくれます。それは調律師さんという特別な方のお仕事とも言えます。なので、ピアノ演奏は一人では完結しないのです。
音を鳴らすことに絞って話を進めると、ピアノは鍵盤を下に動かすとダンパーが上がりハンマーが弦を叩いて音を出してくれます。
どう鍵盤を下げてもハンマーが弦に触れるところまで上がってくれると音は出ます。
不用意にちょっと触っただけでも音は出てしまいますが、その音では音楽としては適したものになりません。物に軽くぶつかっただけですので、何かにぶつかった音を集めても音楽にはなりません。これは雑音と言います。
ではしっかり叩いてはっきりした音にしよう!これもあり得ません。人はこれを騒音と言います。
ガンガン叩いた音を集めても大迷惑です。
だからピアノは腕や体の重みを使って音を出します。そうするとコントロールの効いた良い音が鳴ってくれます。
弦楽器は両手の役割分担が目に見えますが、ピアノは両手で同時にそれをしています。
鍵盤を押さえ、音を鳴らす。
しかも道具を直接使って奏者が弾いているわけではないので、それが非常に分かりにくい。
重さは力を抜くことで得られます。力が入っているとキツく固い音になり、そして音自体が鳴りません。
指の力みが音の固さに直結する楽器です。速いパッセージが弾けないというだけではないのです。
力んでも速いパッセージが弾けるよう無理な練習を続けると手を痛めます。
まだ速いパッセージが弾けない小さなお子さんでも、力んだ指の音は痛々しく気の毒になります。ピアノはそのような指で弾くものではありません。
腕を自由に使うためには体を支えなければいけません。だから体を安定させられる姿勢が必要なのです。腰と背中と足で体を支えます。
重さはリラックスさせた腕から生まれます。
その腕は肩と指先で支えます。
これがピアノという楽器の最初の一歩です。
そこを飛ばしてレッスンを始めてしまうことが浸透しすぎています。
教える方もそう習ったからですが、もう気付いても良いと思います。本当にどうにかならんのかと思います。
因みに、ヴァイオリンのかたが弓に重さを載せる感覚を掴むのに次のような事が書いてありました。
「机の前に座って、机の上に手のひらを置きます。このとき、手首の関節から腕よりの部分(前腕と上腕)は机に付かないようにします。この状態で手の力を抜いていくと、腕の重みが手のひらに乗るようになりますね。この状態が基本だと思います。
次に、腕の重みを手のひらにのせた状態で、手のひらを左右に滑らせてみます。そのときに、腕の重みを軽くせず、重みがそのまま乗っているようにするのがコツです。これをやってみると、予想外に手のひらに重みが乗っていることに気づくと思います。」
私はピアノの上で説明のためにこの動きをすることがよくあるのですが、実際に生徒にしてもらったことはないので、今度机の上かピアノの蓋を閉じて椅子を少し高くして試してみようと思います。
上の文章はこちらにあります。