学習障害は、アメリカ精神医学会の最新版DSM-5により、限局性学習障害/限局性学習症と診断名が変わりました。
DSM-Ⅳで使われていた学習障害という言葉は、現在でもよく使われています。
LDは、アメリカ精神医学会の医学的判断ではLearning Disorder(混乱)の略、文部科学省ではLearning Disabilities(障害)の略。
LDは治療はできませんが、教育を工夫することによって学習機能を高めたり、改善することができます。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
医学的にLDは、「読み、書き、計算」の障がいに限定。
文部科学省の教育的領域では、「聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力」の障害と範囲が広がります。
文部科学省はLDを次のように定義しています。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。 学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
これは1999年に作られたものと現在も変わっておりません。
もう少し柔らかく言うと、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
知的な能力に大きなつまづきがないものの、
・聞いたことの理解が難しい
・話したいことがうまく表現できない
・文字の読み書きが苦手
・数の大小がわからない、繰り上がり・繰り下がりの計算ができない
・図形や時間の流れ、文章のストーリーをたどることが苦手
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
これらに関しては、次回もう少し詳しく見ていきます。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
文部科学省は2002年から10年おきに、学習面・行動面で著しい困難を示す生徒の割合を全国調査しています。
これは支援を必要としているものの、通常学級にいて支援を受けられていない生徒という意味です。
調査が始まった2002年は、公立小中学校の通常学級の6.3%に存在する結果となりました。40人に2.5人。
通級、特殊学級、養護学校で既に支援を受けている生徒が1.4%。支援が必要にもかかわらず受けていない生徒がこれだけ存在するということです。
内訳は、LD 4.5%/ADHD 2.5%/LDとADHD 1.2%
第3回となる昨年2022年は、全体の8.8%。40人に3.5人、30人に2.6人です。
内訳は、LD 6.5%/ADHD 4.7%/ LDとADHD 2.3%
ピアノの生徒が30~40人いたら、これに近い人数に出会っても不思議ではありません。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
発達障がいは症状が重複しますが、LDに伴いやすい症状として、ADHD、運動能力障害があり、LDの3~5割に見られます。また、てんかんはLDと合併しやすい病態のひとつです。
てんかんは、大脳神経細胞が過剰に放電することで起きます。
放電の場所により症状は様々ですが、全身または手足の痙攣、意識障害、無意味な仕草、脱力と言った症状が現れます。
痙攣以外は気付かれないことがあり、突然の意識消失やぼんやりした表情を見せ数秒~数十秒で戻る小発作や、きょろきょろしたり、変な音、におい、痛みを感じるといった、意識がある単純発作などがあります。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
LDはサポートによって学習機能を高めたり、改善できますので、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・なるべく早い段階で児童相談所、小学校に相談
・臨床心理士、言語治療士のいる大きな病院の小児科、精神神経科を受診
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
親が抱え込むことは子供の苦しみを大きくすることにつながるので、最も避けるべきことです。
ただ、就学前の子供の判断は難しく、危険性が高いとしか言えないようですが、次のような症状があるそうです。
ボールが取れない。おもちゃを扱えない。語らい語が少ない。言われた言葉が理解できない。5歳で10まで数えられない。色の名前が言えない。
小学生になると、学業成績が悪いことで表面化します。注意散漫、鉛筆の持ち方が悪い。字が下手。運動が上手くできない。算数の成績が悪い。
実は私の生徒さんで、過去に2人、気になる生徒さんがいました。
別の機会に少し書こうと思いますが、1人の生徒さんに関しては、私がもしかしたらと思った時には手遅れでした。
家でもの凄い大声で叫び、ご近所から何事かと心配されると聞いた頃に、私のもしかしたらという考えは確かなものになりつつありました。
小学1年生でした。ピアノレッスンではLDのことに触れなくとも補助をする方法がありますので、それを試そうと思い始めた頃に退会されました。
お父様が、学校の勉強もできないのにピアノなんて習っている場合ではない、と仰ったそうで、退会手続き後にお母様にそのお話を伺い、残り1回のレッスンで急に新たなことをしたところで、それがどのような効果を発揮するものかわからないまま最後のレッスンを終えても本人が困惑するだけなので、何もできませんでした。
もう20歳は過ぎているはずです。どうしているかと今でも思い出します。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
LDと診断されるまでには検査が必要です。
ウェクスラー式知能検査がまずは行われ、LDであると推定されると3つの検査が行われます。
どの分野が苦手であるかの検査です。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
サポート機関がいくつかあります。
全国LD親の会は1990年発足。この会の発足により、日本でLDの支援が始まりました。アメリカでは1963年にその動きがあり、1975年には正式に教育支援の対象となっています。
日本では、2007年に本格的な特別支援教育が全国的に開始されました。
新着情報等最近の動き:文部科学省
LD情報を得られる公的機関もあります。
国立特別支援教育総合研究所
発達障害教育情報センター
発達障害情報センター
日本はアメリカより30年位遅れています。
支援が始まっても浸透するにはさらに時間がかかります。
知ることは大事です。音楽を専攻する学生さんはレスナーになることが少なくないと思いますので、授業で発達障がいについて学んでいると良いのですが・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
参考文献
『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』
上野一彦 月森久江 著/ナツメ社/2010年
『怠けてなんかいない!セカンドシーズン2 あきらめない読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方』
品川裕香 著/岩崎書店/2010年
『じょうずなつきあい方がわかる LD学習障害の本』
宮本信也 監修/主婦の友社/2009年
『こんなとき、どうする?はったつしょうがいのあある子への支援 幼稚園・保育園』
内山登紀夫 監修/ミネルヴァ書房/2009年
『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子を育てる本』
月森久江 監修/講談社/2008年
『健康ライブラリー LD(学習障害)の全てがわかる本』
上野一彦 監修/講談社/2007年
『LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)子どもたちの「学び」と「個性」』
上野一彦 監修/講談社/2003年
『うちの子、なんかちがう?学習障害(LD)とその周辺の子どもたち』
上野一彦 監修/小学館/2003年
『学習障害 発達的・精神医学的・教育的アプローチ』
齊藤久子 監修/プレーン出版/2000年
参考サイト
学習障害(限局性学習障害,LD)とは?症状、支援方法を解説します。|スタジオそら学習障害(限局性学習症)
軽度発達障害フォーラム LD 統計
https://www.mext.go.jp/content/20221208-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf
LDとは?LDの定義から歴史まで徹底解剖!【詳解LD】 | Easpe
第6回 てんかんと発達障害 | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターてんかんのある子供の教育|てんかん情報センター