朝7時少し前、空を見上げると、まだお月様がいらっしゃった。
白みかけた空に、まだ煌々とお月さまがいらっしゃった。
お月さま、お月さま。
これから どこにいらっしゃる?
遠い遠い、海の向こうのあなたの国に、
夜の光りを届けに参ります。
夏の夜、買い物袋を抱えて、駅のデッキから眺めた月。
虫の声を聞きながら、病室の窓から眺めた月。
そして、空っぽの部屋、冷たい空気の中で一人見上げた月。
いつもいつも、私に寄り添っていてくれた。
そう思ってはいるけれど、こうしてたまに名残の月に出会うと、幸せに空を見上げていた夜明けの時間を思い出す。
何の不安もなく、ずっとずっとこの幸せな時間が続くと思っていた朝。
いろいろなことが、波のように押し寄せて、たくさんのものが去って行った。
そして今、一人で見る月。
一人じゃないよ、いつも一緒だよ、とは言っても、やっぱり一人は一人だ。
お月さま、お月さま。
私のかわりに、照らしてください、包んでください。
私の大切な動物たち、大切な人たち、そして大切な思い出たちを。