私はこれまで正直な気持ち、伊集院 静の小説なんて読みたくないと思っていた。
これは私の“わがまま”です。
なんかあの人の小説なんて読んでやるもんかという思いがあった。
これまで彼のいろいろなエッセイや雑文を週刊誌などで読んでいて、そんなふうに思ってしまった。
ある日図書館に行って、やはり伊集院の小説を読まないで「読みたくない」というのはずるいなと思った。
それでこの文庫本を借りて読みました。
伊集院 静の「乳房」という文庫本にあった小説はよかったです。
私の好きな小説だった。
「くらげ」「乳房」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」
という短編がおさめられていた。
この中で「クレープ」という小説が一番よかった。
主人公は、可葉子という女と同棲している。
ある日、可葉子が15年前に離婚した江津けいこという人から電話がきたと男にいう。
江津というのは男の名前だ。
3度かかってきてから男は、「家に電話をかけないでほしい」とけいこに電話した。
「したくてしているんじゃありません」
と憤慨したような声で言われた。
そのけいこから先月電話があった。
「みのりが高校の受験に合格したんです」
みのりは男の娘だ。
「みのりはあなたに逢いたいといってます」
「みのりが……、そうか」
「逢ってくださいますか」
男は娘と逢うことになる。
この短編がよかった。