老人と海 (新潮文庫)福田 恒存,ヘミングウェイ新潮社このアイテムの詳細を見る |
ここのところノンフィクションばかりで全く小説を読んでなかったので久方ぶりに。
単なる思いつきですが、これまでほとんど読んだことのない外国文学のスタンダードものをまとめて読んでみようかと。
まず手に取ったのがヘミングウェイの「老人と海」。
読んでいて、とにかく「息苦しさ」を感じる小説でした。
その息苦しさとは、主人公の老人が置かれている境遇や状況から来るものでももちろんあるんだけれど、それよりもむしろこの小説の「特異な構成」によりもたらされたものであるように思えました。
「特異な構成」とは、この小説が全編1シーンノーカット、映画で云えば「切り返し無し」で構成されている、ということを言っています。
厳密にいえば、文庫本150頁のうち、最初の30頁および最後の10頁(港町での場面)には場面展開が存在します。
が、中間の100頁以上は船の上での老人のモノローグのみ、完全に”1シーンノーカット”になっています。
なので、読む手を休めるのが非常に難しい。
要は、”切れ目”がないのです。
だから読んでいて息苦しい。
読んでるだけでこうなのだから、この小説を生み出したヘミングウェイが、これを書くためにどれだけの精力をつぎ込んだのか、想像を絶するものがあったのだろうなと思います。