世界史とヨーロッパ (講談社現代新書)岡崎 勝世講談社このアイテムの詳細を見る |
ここのところ、アメリカについての本、アラブについての本、ユダヤについての本、と読んでいると、世界史について改めて知識を整理したくなる衝動に駆られます。
もともと大学受験時に世界史を選択しなかったので、世界史について体系的な知識を持ち合わせておらず、機会があればぜひ勉強しなおしたいという気持ちがもともとあったこともあり、手に取った一冊です。
といっても、本著は一般的な世界史の解説書ではなく、「歴史学の歴史」ともいうべきもので、ヨーロッパ世界における各時代においてどのような歴史観が支配的であったのかについて時代を追いながら検証していく内容となっています。
我々が「歴史」というものを考える場合、ついつい現在を起点として過去を振り返るという態度に終始してしまいがちですが、その起点たる「現在」も数十年、数百年経てば「歴史」の一部になっていくわけです。
そんなこと考えてみれば当たり前なことなんだけど、けっこう見失いがちな視点でもあります。
例えば21世紀初頭に生きる我々の目から見た「古代ギリシャ時代」の捉え方と、古代、中世、近代に生きた人々の目から見た「古代ギリシャ時代」の見え方は各々まったく違ったものであったはず。
各々の時代における「歴史観の世界観的基礎」および「歴史学・世界史象の特質」が紐解かれていきます。
かつて「普遍史」が支配的だった時代、歴史は聖書の世界と同一のものでした。
アダムとイブやノアの方舟は、歴史上の事実として捉えられていたわけです。
ところが、次第に中国やエジプトには聖書の時代よりも古い文明が存在した事実が分かるようになるに従って、近代以前のヨーロッパの歴史家たちは、それらの事実を「普遍史」との間で如何に整合性をとって組み込むかについて一方ならぬ苦心をしたということです。
今から考えると滑稽なことですが、現代の我々が常識だと考えている科学的歴史観がけっして普遍的なものではなかったことを示すいい例だと思います。
世界観・歴史観というものを客観的な観点で見直すよい機会を与えてくれる一冊です。