金の仔牛 | |
佐藤 亜紀 | |
講談社 |
世界史上の三大バブルの一つに挙げられるミシシッピ会社事件(参照:wiki)の時代、18世紀初頭のパリを舞台にした歴史小説。
単純に、金融市場や投資術の成り立ちを知ることができるという意味で興味深い。
投資については完全な素人である自分には完全には理解できないまでも、証券化やデリバティブによるリスクヘッジ手法や、空売りによるの初歩的な考え方というかその萌芽を感じることができます。
或いは、それまで金や銀などの貴金属が通貨の役割を果たしていたものが、兌換紙幣となり、不換紙幣となり、やがて通貨が単なる数字の「記録」となっていく、その展望も含めた過程を俯瞰することも。
で、そこに投資家紳士や追剥ぎの親方、故買屋、残虐貴族などの怪しげなキャラクタが乱立し、猥雑で絢爛な大混乱の時代を主人公のカップルが軽やかに駆け抜けていく痛快さ。
描かれているのはほんの一年程の期間、バブルが最大限に膨らみ弾けるスピード感と刹那感がなかなか佳い余韻を残してくれます。