だから荒野 | |
桐野 夏生 | |
毎日新聞社 |
これまでのドラマティックな桐野ワールドに比べると、ずいぶんと身近なところをモチーフにした作品。
しかし、これだけの筆力のある作家に身近なところを攻められると、なんだか身につまされるようなリアリティを感じてしまう。
やはり自分としてはダメ旦那・浩光に、10年後くらいの自分の姿を重ねながら読んでしまうのだけれど。
もちろん、こんなダメなヤツではない(と思っている)けれど、それでもところどころ思い当たる精神性を見つけてしまってちょっと恥ずかしくなったり。
浩光に限らず、主人公は皆デフォルメされている。
が、言動一つ一つが無理なく造形されているというか、基本的な行動原理が違和感なく形作られている。
だからこそ空恐ろしい。
女性作家が女性を主人公にして書いた小説なので、男性の登場人物はやや不利な立場に置かれてはいるものの、男性読者としてはそこをグッと堪えて、謙虚な姿勢で読まなきゃいけないんだろうな、とは思う。
その意味で「痛い」小説。
一日で一気読みでした。