オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える | |
木村 元彦 | |
集英社インターナショナル |
先に読んで感銘を受けた『悪者見参』の著者・木村元彦氏が、ベストセラーとなった本作の著者でもあることを今更ながら知り、図書館で手に取った。
オシム語録が話題を呼んだのも、つい最近のことのように思えるが、もう十年以上前なのだな。
川淵会長(当時)が、口を滑らせてジーコの後任がオシムであることをバラしちゃったのが2006年。→参考記事「オシム狂想曲に想う」(2006年7月3日)
オシムが脳梗塞で倒れて、岡田武史が二度目の代表監督に急遽就任したのが2007年。→参考記事「船出」(2007年12月7日)
時が経つのは速いもの。
平和な日本を舞台にしているだけに、正直言えば『悪者見参』の壮絶さ、痛切さに比べると、ルポルタージュとしては見劣りがする。
「オシム節」がすっかり耳馴染みになってしまってから読んでいることもあるかもしれない。
が、ここに記される「日本に来る前のオシム」の半生の壮絶さは想像を絶するものがある。
そしてその数奇な体験・経験があったからこそ、含蓄に富む「オシム節」が出来上がったことが腹に落ちる。
祖国が分裂・崩壊する中、様々な勢力の思惑を交わしながら、民族今世のユーゴスラビア代表を率いて、1990年W杯イタリア大会でベスト8に導いたオシム。
そして、そのチームの大エース・ストイコビッチ。
バルカンを代表する偉大なフットボーラー二人が、やがて共にこの極東の島国にたどり着いた運命に感慨を覚えざるを得ない。