シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か | |
日本経済新聞社 | |
日本経済新聞出版社 |
日経お得意の内実ドキュメンタリー記事をまとめて書籍化したもの。
いつもながら、よくもまあ実際その場にいたかのようなしたり顔の文章を書けるもんだ、と半ば感心、半ば呆れてしまうが。
今年(2016年)2月くらいまでの時点での出版なので、ちょうどホンハイの出資を受けて傘下に入るか、産業再生機構の支援を受けて実質国有化されるかの決断を迫られているタイミングで本は終わっている。
その後すったもんだの挙句、ようやく先日ホンハイからの株式代金払込みも完了して新経営体制がスタートしたのは衆知の通り。
副題に「名門企業を壊したのは誰か」とあるが、シャープが傾いた原因として、液晶事業への過剰投資とそれに続く経営陣の内紛、権力闘争に求めている。
近年の歴代社長のうち、町田氏、片山氏については、有能だが権力欲にとらわれた人物として描かれ、それに続く奥田氏、高橋氏は経営者の器ではないと言わんばかりの散々な書かれ方。
経営者の悪口に終始しているが、それで済ませてしまってよいのだろうか。
最後の方に、シャープの「元首脳」のこんなセリフが出てくる。
『シャープ社内の誰か優秀な人が突然出てきて、再生のシナリオを描いていくようなことにならないと、士気は下がるばかり』
こんな他人頼み、無い物ねだりの見解を吐いてしまうような人物しかいないようなら、そりゃダメだわな。
だいたい、この規模の会社で同族経営でもないのに、前社長の娘婿の兄や娘婿が社長を継いできている事実にちょっと引いてしまうし、固い財務体質や「目のつけどころがシャープでしょ」の革新性はあったとしても、結局は昭和の古い企業体質を引きずっていた印象をぬぐいきれない。
突き放した言い方になってしまうが、どのみちこうなるべき運命の会社だったのではと感じてしまう。