![]() | 壷中の回廊 (集英社文庫) |
松井 今朝子 | |
集英社 |
Kindle版にて読了。
昭和5年の東京。
震災からの復興途上、市民の文化が爛熟する一方、恐慌や全体主義の足音が聞こえ始める。
事件の舞台となる「木挽座」は歌舞伎座のことであろう。
梨園の頽廃に、労働運動のうねりが重なっていく。
このあたりの世界観構築は見事で、癖のある登場人物の造形と相俟って、小説世界に浸りながらページを繰る手を止めたくなくなってくる。
惜しむらくはミステリとしての完成度か。
前半の世界構築が重厚な分、後半の種明かしがやや薄っぺらく感じられてしまう。