負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法 | |
勝見 明 | |
PHP研究所 |
Kindle版にて読了。
著者は、キリンビールの元副社長。
(自分は未読だが)『キリンビール高知支店の奇跡』がベストセラーとなり、各地で講演活動を行う中で、負けグセがついて受け身になりやらされ感が常態化している社員、疲弊した現場が蔓延している日本企業が多いことに問題意識を覚え、そのような現状を打破するために誰でも実践できる方法論を示すことに主眼を置いて本書を著したとのこと。
著者がキリンビール高知支店で実現した「V字回復」の体験を体系化するともに、「日本企業の多くが、オーバー・プランニング(過剰計画)、オーバー・アナリシス(過剰分析)、オーバー・コプライアンス(過剰法令遵守)の三大疾病に陥っている」と主張する野中郁次郎氏の「知識創造論」の理論に位置付けて解説する試みも為されている。
本書で示される方法論は、理念を持つこと、現場に根差した顧客視点で戦略を考えること、理念と戦略に基づき社員の行動スタイルを変えること、に尽きる。
著者が高知支店の事業を立て直した経緯は改めて見事だなと思う一方、書かれている方法論はビールのようなシンプルな商材を売る商売だからこそ明快だったのでは、という気もしなくもない。
まあそれはそれとして、個人的に重要だなと感じた点を以下に書き留めておく。
・店舗を一軒でも多く回るという高知支店の行動スタイルは、「高知の人たちにおいしいキリンビールを飲んで喜んでいただく」という理念に裏付けられたもので、訪問件数を目標にしたわけではなく、理念に基づくあるべき状態をつくろうとして結果的に高いレベルの訪問件数が継続された。
・じっと考え込んでいても覚悟はなかなか芽生えない。現場を回り、お客様との雑談を通じて気づきを得たり、自社や自らの存在意義を認識するもの。そうしてリアリティある「理念」が生まれる。
・理念が明確になると、仕事の目的が、競合相手との競争に勝つことではなくなり、社員の言動も理念の追求へと転換する。理念が確立され、それを土台としてその上に戦略が組み立てられていく。競合相手との競争は、競争に勝った時点で目的が達成されるが、理念の追求は、ひとつの目標が達成されても終わることなくずっと続く
ことになるので、戦略・戦術の質が向上を続け、いつまでも「勝ち続ける 」ことができる。