そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『宝島』 真藤順丈

2019-04-21 17:43:13 | Books
 
Kindle版にて読了。
 
戦後70数年が過ぎた現在でも、米軍移設問題で揺れ続ける沖縄。
東京からそれをあたかも「自分事」であるかの如く党派的にしたり顔で語る我々は、沖縄で暮らす人々にとってこの問題の根深さを実感することができない。
この小説は、そんな「生(ナマ)の物語」としてのオキナワを、強烈な当事者性を疑似体験させてくれる。

戦争中の悲惨な出来事、そして戦後の米軍統治下で数々発生した米兵による犯罪、米軍機墜落による大惨事、カウンターとしての暴動といった実際に起こった事件・事故や実在の人物に、小説の主人公となる「戦果アギヤー」たちが傷つきながら逞しい生命力で疾走していく生き様をk絡み合わせ、強烈なドライヴ感をもった大河ドラマが繰り広げられる。

読んでいて、目を背けたくなるような、残酷な現実の試練を浴びながら、主人公たちは島人ならではの楽観性と行動力で人生を切り拓いていく。
そのどこまでも前向きな生きる力に感動しつつ、裏腹に、島と島人たちが被り続けている不当に過酷な運命に心が暗くなりもする。

沖縄への見方を一新させてくれる社会派小説であると同時に、読む者に力を与える極上のエンターテイメントでもある。
大傑作。
コメント
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