そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『雪国 (新潮文庫)』 川端康成

2024-01-20 13:13:00 | Books
本棚の片隅にずっと潜んでいた文庫本をふと開いてみた。奥付けによると平成6年の刷版。30年「積ん読」していたようだ。

冒頭の一文ばかりがあまりに有名になっているが、満を持して読んでみると、とにかく美しい。

冬には雪に閉ざされる温泉町。俗世間の煩わしさや嫌らしさは覆い隠される異世界で、根源的な煩悩が開かれていく感じ。
凡そ人生における人との出会いや交わりなど、刹那の幻想のようなもの。
約一世紀前の小説でありながら、普遍を感じさせる。

描かれる女性2人の造形が実に魅力的。
駒子の利発さ、ころころと気分が変調する危うさ。
葉子の声の美しさに象徴される清廉さ、裏腹に儚く掴みどころのない妖しさ。

汽車が雪国へと到着する冒頭場面、雪中火事と天の河による終幕の印象深さは尋常ではない。
情念と情景が一体に、溶け込んでいく。

もともと短編の集合体とのことで、全体通すと必ずしもすっきり筋が通っていない印象もあり、けっして読みやすい小説ではない。
日本語表現も、文法や言葉遣いに違和を感じるところもところどころある。
が、それでもなお美しい。

#ブクログ



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