上砂理佳のうぐいす日記

3月31日(月)から4月6日(日)まで銀座中央ギャラリーの「10×10版画展」に銅版画小品を出品します★

画家・石田徹也

2007-02-21 | うぐいすとお仕事
先日、本屋さんで「石田徹也遺作集」という本をみつけた。
衝撃を受けた。
表紙からしてすごい。プロペラ機がそのまま男の人の体になっている。
これは好みだ…と思い頁をめくると、
2006年、踏切事故で31歳にして夭折。
武蔵野美大出身。「ひとつぼ展」でグランプリを受賞、など。
どうりで、浅葉克巳の追悼文なども載っている。期待の新鋭だったということだ。
私も「どこかで見たかな?」という記憶はあったが、良くは知らなかった。
次から次へと「憂鬱そうな若い男性」=いつも同じ人物が出てくる。
自分を投影した人物らしい。
男性はトイレやベッド、椅子、テーブルと同化(融合)していたり、
ベルトコンベアーに乗っていたり、溺れそうになっていたり。
シュールレアリスムだ。
写実で色調は陰鬱だけど(アクリルだろうか)、どこか「抜けている」感もある。

作品が多い。
31歳でこれだけの作品数を残したということは、アルバイト以外の時間は
ほとんど制作に費やしていたことになる。
それにしても凄い。凄すぎる。
「ニート」とか「引きこもり」とか、「コンビニ」「ケータイ」「パソコン」
「虐待」「いじめ」「自殺」「過労死」「リストラ」「ワーキングプア」…
いくらでも出てくるな。
そんな言葉が出てくるような。そんな絵です。
でも安っぽいグロではなく、何故か静謐な「気品」すら漂っています。

私は自分も絵描きのはしくれなのに、絵画の魅力をなかなか文章で表現出来ない
(だから、しない)。
考えてみれば「言葉で表現できない」から、絵にあらわすということだ。
石田徹也の絵を見ていると、今の日本(いや世界)を覆っている不安感が、
こちらにもジワジワ迫ってくる。「怖い」という人もいるだろう。
画集を買うか否か迷って…もう少し、気持ちを落ち着けてから…と思った。
というのは、アレを部屋に置いておいて時々パラパラめくったりしたら、
きっと苦悩にさいなまれる。
悪い夢。
でも、指の隙間からチラと見たくてたまらないような。とにかく凄い。

こんなにふうに「全身絵描き」な人に衝撃を受けたのは、
一昨年のミヒャエル・ゾーバ以来。
遺作展は既に終わってしまってるので残念です。でも画集で充分伝わるなあ。
(興味のある方は、探求してみてください)
コメント (4)
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