今年の夏休みも広島県尾道市に行く予定。
尾道との出会いは一本の映画が切欠だった。
話は逸れるが、私は10年に一本の割合で人生に多大な影響を及ぼす映画に出会う。
直近では「下妻物語」。
その前は「ふたり」である。
私を尾道の虜にさせたのは「ふたり」。
中学二年生の時、松竹の映画館で母と妹とで観た。
本編は大林宣彦監督の新尾道三部作のひとつである。
出来損ないの妹(石田ひかり)が優等生の姉(中嶋朋子)の事故死によって、成長するストーリー。
初恋や親への反感、友達との確執や友情をうまく表現できていて、
観た者に甘酸っぱさを残す、まさに名作。
迷路みたいな坂道に縁取られ、海(厳密に言えば尾道水道)が見える尾道が舞台。
その素晴らしさたる風景は舞台ではなく、登場人物に名を挙げてもよいぐらいに印象的なんである。
玄関の隣に二階建ての民家の屋根…坂の町独特の風景は、関東平野で育った私にはとても新鮮に映った。
中学時代の地理の時間、中国地方の地図を見てはうっとりし、
「瀬戸内気候」や「山陽」という単語を聞くと萌える女子であった。
会社員になった今、夏休みになると尾道に訪れ、独りでこの町と対話する。
「ふたり」で姉・千津子は不慮の死を遂げる。
その事故シーンのロケ地に花を供えるのが毎年の習わしだ。
(海岸通りの花屋の店員さんは元気だろうか。)
事故現場では、千津子のように夭折した人たちに恥じない生き方をせねば、と思いながら毎年手を合わせる。
他にもノスタルジック溢れるロケ地がてんこ盛り。
決して華やかな都会ではないが、文化の香りが強く息づいている、そんな町だ。
人が生活しているありふれた風景でも尾道マジックにかかれば、映画になる…そのぐらい風情があるんである。
ロケ地巡りの他に古寺巡りや、志賀直哉や林芙美子等の文学に纏わる土地巡りも楽しめる。
今年も例年通り、まずは広島駅まで行き、平和資料館を見学、
お好み焼きを食べてから山陽線で深夜に尾道入りをする。
本来は東京から向かい、福山駅で新幹線を降りて、在来線で尾道に入るのがツウ。
山々の景色から海のある尾道の景色へと、一気に開ける感動は天下一品らしい。
今年の尾道での四日間は、尾道散策は勿論、近くの島にも行くつもりだ。
夏休みまで、あと十日。
楽しみの日が近付くと、途端に時の流れが足踏みするのは何故だろう…。