最高裁判所裁判官の暴走を許さない

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非上場企業の買い付けについて、非上場を理由にディスカウントできるか

2015-04-07 13:43:05 | 日記
平成26(許)39  株式買取価格決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成27年3月26日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄自判  札幌高等裁判所

非上場企業の会社A社が別の会社B社に買収を受けることになりました。会社法786条2項による買い取り請求なので、A社はB社に吸収されるようでした。(786条2項株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は消滅株式会社等は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。)
上場企業であれば公開買い付けで値段を自由に設定して買い付けることができますが、非上場となると相対取引になるので交渉で値段が決まってくることになります。企業の買収に関して、どのような基準で計算すべきかは企業会計基準や会計準則にはありません
A社について一般的に行われているように公認会計士の監査を受けた上で、企業価値を鑑定してもらい、そこから非上場企業であることを理由に25%の値引きをされたものを提示されました。
これを不服として、A社の株主がこの値引きは不当であると訴えました。
これに対して、第一小法廷は以下のように理由を述べています。

非流動性ディスカウントは,非上場会社の株式には市場性がなく,上場株式に比べて流動性が低いことを理由として減価をするものであるところ,収益還元法は,当該会社において将来期待される純利益を一定の資本還元率で還元することにより株式の現在の価格を算定するものであって,同評価手法に,類似会社比準法等とは異なり,市場における取引価格との比較という要素は含まれていない

要するに、収益還元法は会社を収益を得る道具として長期間にわたる支配関係を前提としていること。類似会社比準法は、文字通り他の似たような会社と比べた上でこのくらいの値段が相当と類推するもので、売却を前提としている場合に多く用いられます。
今回の裁判結果は、これは実務をよく知らないで出した判断ではないかという気がしてなりません。
第一に、金融業界では収益還元法が一般的に使われていますし、個人投資家でも用いる方法です。
第二に、類似会社比準法は投機で用いる方法です。
第三に、類似会社と言っても全く同じ条件下にある企業は存在しません。あくまでも同程度の規模、社歴、事業内容の企業との比較ですが、社長のリーダーシップや経済状況によって全く株価が異なるのは、証券取引をやった人なら嫌というほど経験しているはずです。
第四に、会社は営利追求社団法人であることから、収益の道具としてA社を買収しているのです。したがって、その目的に合わせれば収益還元法で計算すべきでしょう。
第五に、赤字企業でも買収される側の株主を救済する目的で、類似会社比準法も例外的に認めるべきでしょう。

全員一致で値引きは「非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウントを行うことはできないと解するのが相当である。」と結論を出しました。

私の意見としては、収益還元法が原則であるべきで、類似会社比準法は例外的に認められるべきではないかと思います。したがって、収益還元法を用いたからという理由でディスカウントは認めないとするのは、筋違いかなという気がします。


第一小法廷
裁判長裁判官 池上政幸 ややずれている
裁判官 櫻井龍子 ややずれている
裁判官 金築誠志 ややずれている
裁判官 山浦善樹 ややずれている