最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

児童ポルノの撮影は本人が同意しても強制わいせつになる

2018-02-11 18:19:36 | 日記
平成28(あ)1731  児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件

平成29年11月29日  最高裁判所大法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所

刑法(平成29年法律第72号による改正前のもの)176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが,行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではない。

今回はかなりグロい事件ですので、苦手な方は避けてください。

以下、東京新聞の報道です。
 わいせつな行為をしても性欲を満たす意図がない場合に、強制わいせつ罪に問えるかどうかが争われた刑事事件の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は二十九日、同罪は「性欲を満たす意図がなくても成立する」との初判断を示した。「同罪の成立には性的意図が必要」とした一九七〇年の最高裁判例を四十七年ぶりに変更した。十五人の裁判官全員一致の意見。
 判決は、性犯罪に対する社会の受け止め方の変化から「今日では、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべきで、判例の解釈はもはや維持し難い」と指摘。「性的意図を一律に同罪の成立要件とすることは相当でない」とした。
 二〇一五年に十三歳未満の少女の体を触って裸を撮影したとして、強制わいせつと児童買春・ポルノ禁止法違反罪に問われた被告の男(40)の上告を棄却し、一、二審判決の懲役三年六月が確定する。
 最高裁は七〇年、報復目的で女性を裸にして撮影した事件について「強制わいせつ罪の成立には性的意図が必要」と判示。今回の事件で被告側は、知人から金を借りる条件としてわいせつな画像を送るように要求されただけで「被告に性的意図はなかった」とし、この判決を根拠に無罪を主張していた。
 一、二審判決は「被害者の性的自由が侵害されたかどうかは、性的意図の有無に左右されない。性的意図がなくても同罪は成立する」と指摘。七〇年の最高裁判例を「相当でない」として実刑判決を言い渡し、被告側が上告。被告側は、性的意図が不要となれば医療行為などが処罰対象となりかねないなどと主張していた。



事実確認を見ます。
1 被告人は,被害者が13歳未満の女子であることを知りながら,被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。
それに対して、被告人は金銭目的であったとと主張しています。想像するに、ロリコンビデオを撮影するとき、男優が強制わいせつで訴えられたようです。当時の法律では、相手の同意があってもこの年齢との性行為は強制わいせつになりました。

2 原判決が,平成29年法律第72号による改正前の刑法176条(以下単に「刑法176条」という。)の解釈適用を誤り,強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和45年判例とは合わないと主張した。

ちなみに刑法176条は、男女が者に変わっただけで、趣旨は変わりません。

3 昭和45年判例は,被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで,脅迫により畏怖している被害者を裸体にさせて写真撮影をした。
要するに動機が違うと主張したかったようです。

そこで裁判所は動機で判断するのはおかしいと考えたようです。
ア 昭和45年判例は,強制わいせつ罪の成立に性的意図を要するとし,性的意図がない場合には,強要罪等の成立があり得る旨判示しているところ,性的意図の有無によって,強制わいせつ罪(当時の法定刑は6月以上7年以下の懲役)が成立するか,法定刑の軽い強要罪(法定刑は3年以下の懲役)等が成立するにとどまるかの結論を異にすべき理由を明らかにしていない。・・・性的な被害に係る犯罪規定あるいはその解釈には,社会の受け止め方を踏まえなければ,処罰対象を適切に決することができないという特質があると考えられる。


イ だから法律を改正して、刑期も変えた。

この辺りはなんだか詭弁っぽいですね。性犯罪が各国によって社会によってとらえ方が違うというのであれば、殺人や横領だってかなり違いますよ。死刑反対と言っている国すらあるのですから。

ウ 強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきである。

個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。


このこと自体は賛成しますが、アーウの理由はもう少し考えなさいよと言いたくなります。児童福祉法とか関連法律はいくらでもあるでしょうに。犯罪の成立は完全に外形基準でいいと思います。

結論
本件についてみると,第1審判決判示第1の1の行為は,当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから,その他の事情を考慮するまでもなく,性的な意味の強い行為として,客観的にわいせつな行為であることが明らかであり,強制わいせつ罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の結論は相当である。

裁判長裁判官 寺田逸郎
裁判官 岡部喜代子
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 木内道祥
裁判官 山本庸幸
裁判官 山崎敏充
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 菅野博之
裁判官 山口 厚
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一

この判決自体は納得できるものですが、大法廷での審議の割には補足意見すら出ない今一つの論理展開でしたね。