平成30(受)1429 債務確認請求本訴,求償金請求反訴事件
令和2年2月28日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所
被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた損害を賠償した場合,被用者は相当と認められる額を使用者に求償することができる
Logistic Todayによると
死亡事故を起こした従業員が被害者遺族に対し、個人負担で1500万円の損害賠償を支払い、賠償後に福山通運に対して同額の支払いを求めたことが妥当か否か、というもの。運送会社が損害賠償を支払った後に従業員に負担を求める「求償権」に対し、従業員が賠償を支払った後に会社に負担を求める「逆求償権」が認められるかどうかを争った。
一般的に、運送会社は損害賠償保険に加入せず、賠償金を支払う必要がある場合にそのつど自己資金によって支払う「自家保険政策」を採用している会社が多いが、今回の事案を担当した菅野博之裁判官と草野耕一裁判官は、「通常の業務で生じた事故による損害については、従業員個人が負担すべき部分がわずかとなることが多く、これがゼロとすべき部分もあり得ると考える」と意見。重視すべきは従業員(個人)と会社(組織)の属性と双方の関係性にあるとした。
その理由について、「損害賠償を従業員の負担とした場合、著しい不利益をもたらす」のに対し、多数の運転手を雇用している会社側が負担する場合は「偶発的財務事象として合理的に扱うことができる」と説明。同じ賠償額でも従業員と会社では負担の感じ方が異なることを指摘した。これを踏まえ、福山通運が自家保険政策を採ったために、従業員は同社が損害賠償保険に加入していれば得られるはずの訴訟支援など受けられなかったとし、「福山通運が自家保険政策を採ってきたことは、本件における使用者(会社)と被用者(従業員)の関係性を検討する上で、使用者(会社)側の負担を軽減させる理由となる余地はなく、むしろ被用者側(従業員)の負担の額を小さくする方向に働く要素である」とした。
日経新聞の報道です。
民法715条は、被用者(従業員など)が仕事で第三者に損害を与えた場合、使用者(会社など)も賠償責任を負う「使用者責任」を定めている。従業員の活動で利益を得ている以上、そこから生じた損害についても責任を負うべきだとの考え方に基づくものだ。
第2小法廷は判決で「715条の趣旨からすれば、使用者は第三者に対する賠償義務だけでなく、被用者との関係でも損害を負担する場合がある」と判断。どちらが先に被害者に賠償したかによって、会社の負担の大きさが異なるのは相当でないと結論づけた。
17年9月の一審・大阪地裁判決は「雇用主も相応の責任を負うべきだ」として逆求償の権利を認め、福山通運に約840万円の支払いを命じた。しかし18年4月の二審・大阪高裁判決は「本来は従業員が全額の賠償責任を負うべきだ」との考え方から逆求償を認めず、原告側の逆転敗訴とした。今回の判決で第2小法廷は大阪高裁判決を破棄、負担額算定のため審理を同高裁に差し戻した。
草野裁判官(弁護士出身)と菅野博之裁判官(裁判官出身)は補足意見で、福山通運が保険に加入せずに自己資金で賠償する制度を採用していたことは経営判断と認めつつ、結果として女性が保険による支援を受けられなかったと指摘。こうした制度があることで会社の負担が軽くなるわけではないと述べた。
プロの運送会社で、運手個人に保険を払わせていたと?運転に自信があるなら軽い保険でも選んどけ!というものでしょうか。
では、裁判所の事実認定を見ていきます。
1 (1)資本金300億円以上の株式会社であり,全国に多数の営業所を有している。被上告人は,その事業に使用する車両全てについて自動車保険契約等を締結していなかった。
(2)トラック運転手として荷物の運送業務に従事していた。
(3)原告は通運のトラック運転手として業務中に死亡事故を起こした。賠償金は1500万円かかった。
(4)相続人は被上告人に対して本件事故による損害の賠償を求める訴訟を提起し、和解が成立した。
2 被用者が第三者に損害を加えた場合は,それが使用者の事業の執行についてされたものであっても,不法行為者である被用者が上記損害の全額について賠償し,負担すべきものである。民法715条1項の規定は,損害を被った第三者が被用者から損害賠償金を回収できないという事態に備え,使用者にも損害賠償義務を負わせることとしたものにすぎず,被用者の使用者に対する求償を認める根拠とはならない。
・・・被用者は,第三者の被った損害を賠償したとしても,共同不法行為者間の求償として認められる場合等を除き,使用者に対して求償することはできない。
確かに共同不法行為ではないですね。確か、前橋でヤクザがの親分が子分に敵対する組の幹部の殺害を命じたときに、薪沿いを食って殺された人に対して命じた親分の民事賠償が確定した前橋スナック銃乱射事件がありましたが、あれはあくまでも共同不法行為でした。
これについて最高裁は異を唱えました。
民法715条1項が規定する使用者責任は,使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや,自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し,損害の公平な分担という見地から,その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁,最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば,使用者は,その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず,被用者との関係においても,損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。
・・・被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁),上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで,使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。
もろ自動車事故の判例です。
つまり論旨は、保険を掛けたかどうかが問題じゃなくて、まずは事故を起こした運転手が賠償しなさい、その上で使用者責任もありますからそれは払いなさいよという趣旨のようです。
判例主義からすれば当然の判決ですし、高裁が重要な判例の見誤りであると言ってもいいレベルかもしれません。
これについて、裁判官菅野博之,同草野耕一の補足意見
本件事故当時,トラック運転手として被上告人の業務に継続的かつ専属的に従事していた自然人であるという点である。使用者と被用者がこのような属性と関係性を有している場合においては,通常の業務において生じた事故による損害について被用者が負担すべき部分は,僅少なものとなることが多く,これを零
とすべき場合もあり得ると考える。なぜなら,通常の業務において生じた事故による損害について,上記のような立場にある被用者の負担とするものとした場合は,被用者に著しい不利益をもたらすのに対し,多数の運転手を雇って運送事業を営んでいる使用者がこれを負担するものとした場合は,使用者は変動係数の小さい確率分布に従う偶発的財務事象としてこれに合理的に対応することが可能であり,しかも,使用者が上場会社であるときには,その終局的な利益帰属主体である使用者の株主は使用者の株式に対する投資を他の金融資産に対する投資と組み合わせることによって自らの負担に帰するリスクの大きさを自らの選好に応じて調整することが可能だからである。
ダラダラ書いていますが、「一部上場の貨物輸送会社は大量の従業員を雇っており、大抵の場合は事故を起こしても会社が丸抱えで修理費などを出してますよ。そういう時のために保険があるじゃないですか。」と言いたいようです。その上で、
被上告人が自家保険政策を採用したのは,その企業規模の大きさ等に照らした上で,そうすることが事業目的の遂行上利益となると判断したことの結果であると考えられる。
余りにも従業員が車を雑に扱うのは困るから、自分たちで責任とれよという経営上の判断でやったのわかるけどさ。
しかしながら,本件に関しては,上告人は,本件事故を起こしたことについて自動車運転過失致死罪として執行猶予付きながら有罪の判決を受けていること,本件事故当時の固定給が毎月6万円(歩合給や残業代を含めると22万円ないし25万円)であったのに対し,本件事故に際して「罰則金」なる名目で被上告人から40万円を徴収されていること,上告人の被上告人における勤務態度は真面目で本件事故が起きるまで別段の問題を起こしたこともなかったが,本件事故後に被上告人を退職することになったこと,本件事故に関して被害者の遺族の一人から損害賠償請求訴訟を提起され,前述のとおり被上告人が自家保険政策を採ってきたことの結果として保険会社からの支援を得られないまま,長年にわたり当該訴訟への対応を余儀なくされたことが認められる
でもさ、基本給が激安だしこの事故で会社から罰金を取られているんだから、会社は少しは面倒見てやれよ。しらばっくれるのはさすがに酷いんじゃないの?と言っています。
裁判官三浦守の補足意見は
貨物自動車運送事業法は,この事業の運営を適正かつ合理的なものとすること等を目的として(1条),一般貨物自動車運送事業を国土交通大臣による許可制とし(3条),その許可基準の一つとして,「その事業を自ら適確に,かつ,継続して遂行するに足る経済的基盤及びその他の能力を有するものであること」を定めている・・・したがって,事業者がその許可を受けるに当たっては,計画する事業用自動車の全てについて,自動車損害賠償責任保険等に加入することはもとより,一般自動車損害保険(任意保険)を締結するなど,十分な損害賠償能力を有することが求められる(「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」
ン?どうなんですか?確かに法律ではそうなっていますが、大抵の場合は各都道府県のトラック協会でまとまって動いていますよね。ここで一般化するのは根拠が弱くないですか?
特に,使用者が事業用自動車について任意保険を締結した場合,被用者は,通常その限度で損害賠償義務の負担を免れるものと考えられ,使用者が,経営上の判断等により,任意保険を締結することなく,自らの資金によって損害賠償を行うこととしながら,かえって,被用者にその負担をさせるということは,一般に,上記の許可基準や使用者責任の趣旨,損害の公平な分担という見地からみて相当でないというべきである。
自賠責保険があるんだからちゃんと対応しなさいよ、といったところでしょうか。だったら先の段落の部分は無駄ですよね。ダラダラ書きすぎです。
第二小法廷判決
裁判長裁判官 草野耕一 当然
裁判官 菅野博之 当然
裁判官 三浦 守 若干不思議ちゃん
裁判官 岡村和美 当然
全体としてまともな判断だったと思います。個人的には、個人の不始末で起こした事故は会社の名誉にかかわる話にもなるので、会社に賠償しろよと言いたいところですが、法体系が会社が面倒見ろとなっているのであれば、この判断は当然の結果です。
しかし、大企業、しかも運送会社が自社で保険に入らないってあるんですね。
令和2年2月28日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所
被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた損害を賠償した場合,被用者は相当と認められる額を使用者に求償することができる
Logistic Todayによると
死亡事故を起こした従業員が被害者遺族に対し、個人負担で1500万円の損害賠償を支払い、賠償後に福山通運に対して同額の支払いを求めたことが妥当か否か、というもの。運送会社が損害賠償を支払った後に従業員に負担を求める「求償権」に対し、従業員が賠償を支払った後に会社に負担を求める「逆求償権」が認められるかどうかを争った。
一般的に、運送会社は損害賠償保険に加入せず、賠償金を支払う必要がある場合にそのつど自己資金によって支払う「自家保険政策」を採用している会社が多いが、今回の事案を担当した菅野博之裁判官と草野耕一裁判官は、「通常の業務で生じた事故による損害については、従業員個人が負担すべき部分がわずかとなることが多く、これがゼロとすべき部分もあり得ると考える」と意見。重視すべきは従業員(個人)と会社(組織)の属性と双方の関係性にあるとした。
その理由について、「損害賠償を従業員の負担とした場合、著しい不利益をもたらす」のに対し、多数の運転手を雇用している会社側が負担する場合は「偶発的財務事象として合理的に扱うことができる」と説明。同じ賠償額でも従業員と会社では負担の感じ方が異なることを指摘した。これを踏まえ、福山通運が自家保険政策を採ったために、従業員は同社が損害賠償保険に加入していれば得られるはずの訴訟支援など受けられなかったとし、「福山通運が自家保険政策を採ってきたことは、本件における使用者(会社)と被用者(従業員)の関係性を検討する上で、使用者(会社)側の負担を軽減させる理由となる余地はなく、むしろ被用者側(従業員)の負担の額を小さくする方向に働く要素である」とした。
日経新聞の報道です。
民法715条は、被用者(従業員など)が仕事で第三者に損害を与えた場合、使用者(会社など)も賠償責任を負う「使用者責任」を定めている。従業員の活動で利益を得ている以上、そこから生じた損害についても責任を負うべきだとの考え方に基づくものだ。
第2小法廷は判決で「715条の趣旨からすれば、使用者は第三者に対する賠償義務だけでなく、被用者との関係でも損害を負担する場合がある」と判断。どちらが先に被害者に賠償したかによって、会社の負担の大きさが異なるのは相当でないと結論づけた。
17年9月の一審・大阪地裁判決は「雇用主も相応の責任を負うべきだ」として逆求償の権利を認め、福山通運に約840万円の支払いを命じた。しかし18年4月の二審・大阪高裁判決は「本来は従業員が全額の賠償責任を負うべきだ」との考え方から逆求償を認めず、原告側の逆転敗訴とした。今回の判決で第2小法廷は大阪高裁判決を破棄、負担額算定のため審理を同高裁に差し戻した。
草野裁判官(弁護士出身)と菅野博之裁判官(裁判官出身)は補足意見で、福山通運が保険に加入せずに自己資金で賠償する制度を採用していたことは経営判断と認めつつ、結果として女性が保険による支援を受けられなかったと指摘。こうした制度があることで会社の負担が軽くなるわけではないと述べた。
プロの運送会社で、運手個人に保険を払わせていたと?運転に自信があるなら軽い保険でも選んどけ!というものでしょうか。
では、裁判所の事実認定を見ていきます。
1 (1)資本金300億円以上の株式会社であり,全国に多数の営業所を有している。被上告人は,その事業に使用する車両全てについて自動車保険契約等を締結していなかった。
(2)トラック運転手として荷物の運送業務に従事していた。
(3)原告は通運のトラック運転手として業務中に死亡事故を起こした。賠償金は1500万円かかった。
(4)相続人は被上告人に対して本件事故による損害の賠償を求める訴訟を提起し、和解が成立した。
2 被用者が第三者に損害を加えた場合は,それが使用者の事業の執行についてされたものであっても,不法行為者である被用者が上記損害の全額について賠償し,負担すべきものである。民法715条1項の規定は,損害を被った第三者が被用者から損害賠償金を回収できないという事態に備え,使用者にも損害賠償義務を負わせることとしたものにすぎず,被用者の使用者に対する求償を認める根拠とはならない。
・・・被用者は,第三者の被った損害を賠償したとしても,共同不法行為者間の求償として認められる場合等を除き,使用者に対して求償することはできない。
確かに共同不法行為ではないですね。確か、前橋でヤクザがの親分が子分に敵対する組の幹部の殺害を命じたときに、薪沿いを食って殺された人に対して命じた親分の民事賠償が確定した前橋スナック銃乱射事件がありましたが、あれはあくまでも共同不法行為でした。
これについて最高裁は異を唱えました。
民法715条1項が規定する使用者責任は,使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや,自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し,損害の公平な分担という見地から,その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁,最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば,使用者は,その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず,被用者との関係においても,損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。
・・・被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁),上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで,使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。
もろ自動車事故の判例です。
つまり論旨は、保険を掛けたかどうかが問題じゃなくて、まずは事故を起こした運転手が賠償しなさい、その上で使用者責任もありますからそれは払いなさいよという趣旨のようです。
判例主義からすれば当然の判決ですし、高裁が重要な判例の見誤りであると言ってもいいレベルかもしれません。
これについて、裁判官菅野博之,同草野耕一の補足意見
本件事故当時,トラック運転手として被上告人の業務に継続的かつ専属的に従事していた自然人であるという点である。使用者と被用者がこのような属性と関係性を有している場合においては,通常の業務において生じた事故による損害について被用者が負担すべき部分は,僅少なものとなることが多く,これを零
とすべき場合もあり得ると考える。なぜなら,通常の業務において生じた事故による損害について,上記のような立場にある被用者の負担とするものとした場合は,被用者に著しい不利益をもたらすのに対し,多数の運転手を雇って運送事業を営んでいる使用者がこれを負担するものとした場合は,使用者は変動係数の小さい確率分布に従う偶発的財務事象としてこれに合理的に対応することが可能であり,しかも,使用者が上場会社であるときには,その終局的な利益帰属主体である使用者の株主は使用者の株式に対する投資を他の金融資産に対する投資と組み合わせることによって自らの負担に帰するリスクの大きさを自らの選好に応じて調整することが可能だからである。
ダラダラ書いていますが、「一部上場の貨物輸送会社は大量の従業員を雇っており、大抵の場合は事故を起こしても会社が丸抱えで修理費などを出してますよ。そういう時のために保険があるじゃないですか。」と言いたいようです。その上で、
被上告人が自家保険政策を採用したのは,その企業規模の大きさ等に照らした上で,そうすることが事業目的の遂行上利益となると判断したことの結果であると考えられる。
余りにも従業員が車を雑に扱うのは困るから、自分たちで責任とれよという経営上の判断でやったのわかるけどさ。
しかしながら,本件に関しては,上告人は,本件事故を起こしたことについて自動車運転過失致死罪として執行猶予付きながら有罪の判決を受けていること,本件事故当時の固定給が毎月6万円(歩合給や残業代を含めると22万円ないし25万円)であったのに対し,本件事故に際して「罰則金」なる名目で被上告人から40万円を徴収されていること,上告人の被上告人における勤務態度は真面目で本件事故が起きるまで別段の問題を起こしたこともなかったが,本件事故後に被上告人を退職することになったこと,本件事故に関して被害者の遺族の一人から損害賠償請求訴訟を提起され,前述のとおり被上告人が自家保険政策を採ってきたことの結果として保険会社からの支援を得られないまま,長年にわたり当該訴訟への対応を余儀なくされたことが認められる
でもさ、基本給が激安だしこの事故で会社から罰金を取られているんだから、会社は少しは面倒見てやれよ。しらばっくれるのはさすがに酷いんじゃないの?と言っています。
裁判官三浦守の補足意見は
貨物自動車運送事業法は,この事業の運営を適正かつ合理的なものとすること等を目的として(1条),一般貨物自動車運送事業を国土交通大臣による許可制とし(3条),その許可基準の一つとして,「その事業を自ら適確に,かつ,継続して遂行するに足る経済的基盤及びその他の能力を有するものであること」を定めている・・・したがって,事業者がその許可を受けるに当たっては,計画する事業用自動車の全てについて,自動車損害賠償責任保険等に加入することはもとより,一般自動車損害保険(任意保険)を締結するなど,十分な損害賠償能力を有することが求められる(「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」
ン?どうなんですか?確かに法律ではそうなっていますが、大抵の場合は各都道府県のトラック協会でまとまって動いていますよね。ここで一般化するのは根拠が弱くないですか?
特に,使用者が事業用自動車について任意保険を締結した場合,被用者は,通常その限度で損害賠償義務の負担を免れるものと考えられ,使用者が,経営上の判断等により,任意保険を締結することなく,自らの資金によって損害賠償を行うこととしながら,かえって,被用者にその負担をさせるということは,一般に,上記の許可基準や使用者責任の趣旨,損害の公平な分担という見地からみて相当でないというべきである。
自賠責保険があるんだからちゃんと対応しなさいよ、といったところでしょうか。だったら先の段落の部分は無駄ですよね。ダラダラ書きすぎです。
第二小法廷判決
裁判長裁判官 草野耕一 当然
裁判官 菅野博之 当然
裁判官 三浦 守 若干不思議ちゃん
裁判官 岡村和美 当然
全体としてまともな判断だったと思います。個人的には、個人の不始末で起こした事故は会社の名誉にかかわる話にもなるので、会社に賠償しろよと言いたいところですが、法体系が会社が面倒見ろとなっているのであれば、この判断は当然の結果です。
しかし、大企業、しかも運送会社が自社で保険に入らないってあるんですね。