平成26年(受)第1351号 保証債務請求事件
平成28年1月12日 第三小法廷判決
1 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないとされた事例
2 信用保証協会と金融機関との間の信用保証に関する基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たる場合
ある人Aが銀行から借金をしました。担保がないので、保証人を探して欲しいと言われました。Aは債務保証会社に依頼して、昭和41年(1966年)に保証人になってもらいました。
ところが、債務保証会社は後からAがヤクザだったことを知りました。債務保証会社は契約違反だとして、Aの債務保証人になる契約は無効であると主張しました。
まずは、その契約の古さです昭和41年と言えばもう50年前の契約です。その時の契約には、無効条件として反社会勢力(ヤクザの構成員)だった場合については書かれていません。
一般社会では平成19年にる「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」、20年に「信用保証協会向けの総合的な監督指針」を策定し,本件指針と同旨の反社会的勢力との関係遮断させる政策を明言しました。
また先の政策の後に3000万円,2000万円及び3000万円の各貸付けを行っていますが、そのときも反社会勢力だったら契約は無効になる旨を定めませんでした。
平成22年にこの人がヤクザの土建屋の取締役までやっていることが分かりました。
これについて裁判所は、「本件指針等により,反社会的勢力との関係を遮断すべき社会的責任を負っており,本件各保証契約の締結前にC社が反社会的勢力であることが判明していた場合には,これらが締結されることはなかったと考えられる。」としています。債務保証会社は、本来的に行政指導に従って反社会的勢力であるかどうか、ちゃんと調べてヤクザを排除する義務を負うべきだと言ってます。
そこでは、債権をきちんと回収すべきであるとしています。
主債務者が反社会的勢力でないということがその契約の前提又は内容になっているとして当然にその効力が否定されるべきものともいえない。
そうすると,C社が反社会的勢力でないことという上告人の動機は,それが明示又は黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,これが本件各保証契約の内容となっていたとは認められず,上告人の本件各保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。
ということで、審理をやり直せと言う結論になったようです。
若干、最高裁の逃げ口上のようにも感じますが、通常からすると高裁と逆の判決を出せと言う圧力と解釈できるので、最高裁としては「無効である」とまでは言わないが、それに準ずる判決を出せよということのようです。
第三小法廷
裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充
反社会勢力は排除しなければならないというのは分かりますが、借りた金額の元本すら返さなくてよいとした判決もかつてありましたが、そこまでやっていいのかよという感じがします。契約は契約であり、きちんと守りましょうよ。
債務保証会社が、50年も付き合っててヤクザだとは気付かなかったというのも微妙なものがあります。善意の第三者として知りようがなかったと本当に言えるのでしょうか?確かに本判決ではこの辺りがきちんと論証されておらず、また保証会社がAを詐欺罪で訴えていないところを見ると、Aがヤクザだと気づきながら貸していたのかもしれません。
平成28年1月12日 第三小法廷判決
1 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないとされた事例
2 信用保証協会と金融機関との間の信用保証に関する基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たる場合
ある人Aが銀行から借金をしました。担保がないので、保証人を探して欲しいと言われました。Aは債務保証会社に依頼して、昭和41年(1966年)に保証人になってもらいました。
ところが、債務保証会社は後からAがヤクザだったことを知りました。債務保証会社は契約違反だとして、Aの債務保証人になる契約は無効であると主張しました。
まずは、その契約の古さです昭和41年と言えばもう50年前の契約です。その時の契約には、無効条件として反社会勢力(ヤクザの構成員)だった場合については書かれていません。
一般社会では平成19年にる「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」、20年に「信用保証協会向けの総合的な監督指針」を策定し,本件指針と同旨の反社会的勢力との関係遮断させる政策を明言しました。
また先の政策の後に3000万円,2000万円及び3000万円の各貸付けを行っていますが、そのときも反社会勢力だったら契約は無効になる旨を定めませんでした。
平成22年にこの人がヤクザの土建屋の取締役までやっていることが分かりました。
これについて裁判所は、「本件指針等により,反社会的勢力との関係を遮断すべき社会的責任を負っており,本件各保証契約の締結前にC社が反社会的勢力であることが判明していた場合には,これらが締結されることはなかったと考えられる。」としています。債務保証会社は、本来的に行政指導に従って反社会的勢力であるかどうか、ちゃんと調べてヤクザを排除する義務を負うべきだと言ってます。
そこでは、債権をきちんと回収すべきであるとしています。
主債務者が反社会的勢力でないということがその契約の前提又は内容になっているとして当然にその効力が否定されるべきものともいえない。
そうすると,C社が反社会的勢力でないことという上告人の動機は,それが明示又は黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,これが本件各保証契約の内容となっていたとは認められず,上告人の本件各保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。
ということで、審理をやり直せと言う結論になったようです。
若干、最高裁の逃げ口上のようにも感じますが、通常からすると高裁と逆の判決を出せと言う圧力と解釈できるので、最高裁としては「無効である」とまでは言わないが、それに準ずる判決を出せよということのようです。
第三小法廷
裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充
反社会勢力は排除しなければならないというのは分かりますが、借りた金額の元本すら返さなくてよいとした判決もかつてありましたが、そこまでやっていいのかよという感じがします。契約は契約であり、きちんと守りましょうよ。
債務保証会社が、50年も付き合っててヤクザだとは気付かなかったというのも微妙なものがあります。善意の第三者として知りようがなかったと本当に言えるのでしょうか?確かに本判決ではこの辺りがきちんと論証されておらず、また保証会社がAを詐欺罪で訴えていないところを見ると、Aがヤクザだと気づきながら貸していたのかもしれません。
金融機関に勤めていた時は、反社取引については一番気を使っておりました。
特に、政治的信条と反社勢力の違い。自動振替契約口座と基本的人権、その他いろいろと痩せる思いの毎日でした。
さて、金融機関としてはかなり辛いところでしょう。単にガラの悪い人なのか、ヤクザの構成員なのか分かりませんし、しかるべきところから個人情報を提供してもらわないと、実務的には何ともしようがないところですね。
最高裁の裁判官は、そういう実務的なところを見ないで法律だけで金融機関だけに尻拭いさせている自覚はないと思います。もっと社会勉強をしてもらいたいものです。