最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

托卵されていた夫、なぜか嫁が親子関係の不存在確認

2015-07-11 16:51:33 | 日記

平成25(受)233  親子関係不存在確認請求事件
平成26年7月17日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所

ある男性が女性と結婚しました。夫が単身赴任中、妻は浮気をしました。そして浮気相手と二股をかけて過ごしていました。
ある日妊娠が分かり、夫に「あなたの子よ」と伝えていました。夫は大喜び。
子どもが生まれ2年過ぎたある日、夫は妻の浮気を知ってしまいます。そして、疑った夫は子どものDNAを調べてみたところ、・・・真っ黒でした。夫の子供ではなく、浮気相手の子供でした。
そこでこの裁判の厄介なのは、妻が元夫の子ではないと裁判所に認めさせようとしたこと、夫は血がつながっていなくても自分の子として認めよと主張した点にあります。
ところが、民法では正式な夫婦の間で子供が生まれてから1年以内に異議がなければ、自動的に夫の子供として見なされるという規定があります。DNA鑑定で違うと結果が出ているのに、明治に作られた法律に振り回されるのはおかしいという主張でした。

民法772条により嫡出の推定を受ける子につきその嫡出であることを否認するためには,夫からの嫡出否認の訴えによるべきものという規定があります。この点はこの判決でも変わっていません。たとえ夫婦関係が破たんして、嫁が子供を連れ去っていたとしても、親子関係の不存在は自動的に認められるわけではなく、不存在の訴えが必要としています。要するに自分の子供ではないと主張しない限り自動的に夫の子供になります。しかも、異議申し立てには期間があるという問題です。
今回は妻側が浮気を認め、科学的にも根拠がある証拠が出たことから、判決は夫の子供ではないという法律の扱いに切り替わりました。下級審(家裁と高裁)は科学的根拠よりも法律を優先していたとんでもない裁判官だったようです。

私もこの最高裁の判決には大賛成なのですが、付帯意見に気になる点があります。

裁判官山浦善樹の補足意見
上記の外観上の事情がなくても,DNA検査等の結果生物学上の父子関係の不存在が明らかである場合には,親子関係不存在確認訴訟の提起を認めるという考え方があるが,これに賛成することはできない。

中略

①及び②の要件に加えて,③生物学上の父との新しい家庭が形成されていること又は生物学上の父との間で法律上の親子関係を確保できる状況にある
場合には,親子関係不存在確認訴訟が認められるとする考え方があるが,次のとおり,これらの考え方についても賛成することができない。
②及び③の要件に係る事実の有無の判断基準時は,親子関係不存在確認訴訟の口頭弁論終結時となろう。これらの考え方では,当該口頭弁論終結時に②又は③の要件に係る事実が認められなかった場合には,DNA検査等の結果により生物学上の父子関係の不存在が明らかであったとしても,親子関係不存在確認請求は認められないこととなる。この場合には,DNA検査の結果に含まれる重大なプライバシー情報が訴訟の場に提出され,家庭の平和が害されたという結果のみが残されることになる。

中略

裁判所が,私的に行われたDNA検査の結果をみて,「生物学上確実な事実が判明した以上は仕方がない」という姿勢をとるならば,DNA検査の結果だけが法廷を支配することになるであろう。



なんと感傷的な思考であろうか!という印象です。DNA検査を行い親子の血縁関係がなかったと分かった場合、何事もなかったように生活できる方が異常ではないでしょうか。病院での取り違え、妻の浮気があり、本当の子供の存在はどこに?と想像するのが普通の親で、その上で血筋がつながらない事を受け入れて家庭を再構築するのが普通じゃないでしょうか。まずはDNA検査の結果という現実を裁判所は受け入れてしかるべきです。
この子供が成人して結婚し子供を持つ可能性を考えれば、近親婚を避けるためにもこの辺りをきちんとしておく必要があります。


裁判官金築誠志の反対意見は

夫による嫡出否認の訴えの提訴可能期間も,子の出生を知った時から1年以内に限るとされている(774条以下)。つまり,制度的には,1年の提訴期間を過ぎると,夫の子でないことが明らかな場合であっても,法的に父子関係を争うことは一切許されないものとされている。
このような制度が設けられた理由として,一つには,家庭の平和を維持する必要があること,二つには,法律上の父子関係を早期に確定させる必要があることなどが指摘されている


夫側からしか不存在の訴えができないというのは今後も問題があるでしょう。卵子の冷凍保存、借り腹というような技術が確立された現在、その分間違いも出てくる可能性がありますので、この点は民法を改正する必要があります。ただ裁判所は法律を改正する場所ではないので、与えられた法律で判断しなければならないため、この程度しか言えなかったのは納得します。
しかし、家庭の平和を守る云々はこの裁判の案件で言うべきことか?という気がします。既に家庭環境は破綻しています。むしろこのロジックを用いると、浮気した妻のやりたい放題を追認することになりませんか?

中略

民法の規定する嫡出推定の制度ないし仕組みと,真実の父子の血縁関係を戸籍にも反映させたいと願う人情とを適切に調和させることが必要になると考える。その実現は,立法的な手当に待つことが望ましいことはいうまでもないが,・・・

この点については大いに賛成です。

とはいうものの、この親子の行く末が気になります。面会交流権は確保したのでしょうか。血がつながっていても、認められないケースがありますので、親子関係が認められないとなればそれすら絶望的かもしれません。
恐らく、この元夫は可愛がってお風呂に入れたり、おむつを替えたりしていたのでしょう。ある日突然元嫁の浮気が分かり、子供も浮気相手の子であると知り、挙句に連れ去りに遭い、絶望的になったことでしょう。
仮に、夫がDNA鑑定の結果を知る前に子どもを連れて半年ほど独自で監護していたらどういう判決が出たでしょうか。

今回の裁判官は以下の通りです。

最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 白木 勇
裁判官 櫻井龍子
裁判官 金築誠志
裁判官横田尤孝
裁判官 山浦善樹


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