ほとんど映画館で映画など観る余裕のなかった夏以降なのだが、ツアーに出る前に、かろうじて『雪の轍』という映画を観た。四時間近い大作。私は作る演劇が「長い」と言われてしまうタイプの作り手なのだが、先週までやっていた『お召し列車』は比較的短く、二時間十分だ。なんだか「トルコ版チェーホフ」という触れ込みだったが、表現にとって「原本」とは何か、ということも考えさせられた。どうやら昔やけに台詞の少ないトルコの映画を観たなあと観ながら思い出し、後で調べたら、このトルコの監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランの旧作で、『冬の街』 という邦題は着いているが劇場未公開のものなのだった。「UZAK」という原題の『冬の街』は、カンヌ映画祭 グランプリの作品ということだったので、内容をよくわからぬまま、ニューヨーク・イーストビレッジの映画館で字幕付きで観たのである。10年以上前だ。外国で映画を観るなら英語字幕付きがいい。理解しきれぬところはあるが目で見る方がヒヤリングよりはましだからだ。ベトナム行きの飛行機の中で観た韓国映画「暗殺集団」も英語字幕だった。『冬の街』は、孤独なイスタンブールの男と来訪者の交流を描いたものだが、英語字幕は着いていて、そのうえほとんど台詞がないので観やすかった。今まであまり映画でわざわざ描かれたことのないような、とても不思議な心象を描いていて、妙に記憶に残っている。この監督、世界的には知られているらしいのだが、なんと『雪の轍』が日本初公開なのだった。『雪の轍』もまた、なんだか映画を観ている気がしないような、奇妙な鑑賞体験で、主人公が元演劇人であるから、なおさらだった。映画を観ているような気がしない、というのが褒め言葉になる映画だった。内容的には後半は「若い奥さんを貰って悶々とする初老男の話」だから、あまり私には縁がない話なのだったが。
その後は映画館に行く時間も元気もないが、スターウォーズくらいは観ようかなと思っている。
その後は映画館に行く時間も元気もないが、スターウォーズくらいは観ようかなと思っている。