Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

燐光群『くじらと見た夢』、本日、岡山・大千秋楽。

2017-12-19 | Weblog
燐光群『くじらと見た夢』、本日、岡山・大千秋楽。

東京初日は一ヶ月以上前でした。

写真は、いるかを捕る船上の場面。
名古屋公演の場当たり。撮影・姫田蘭。
左から、佐々木梅治、杉山英之。

日曜日、劇作家協会新人戯曲賞の公開審査のため東京に戻り、また岡山でツアー組に戻り、である。

あれこれと、さらなる雑務あり。

1月のアジア共同プロジェクト・清水弥生新作『リタイアメン』の台本進行、とにかく進める。
仮の図面づくり、とりあえず現時点での方向は打ち出してみた。

実のところ、生きている限り当然のように、今ここに記すわけにはいかないいろいろな出来事も起きているのだが、とにかく対応していくしかない。
何かをつくるということも、少しでも状況を良くしていくことも、相手を大切にすることによって実現しなくてはならないのだ、と思いを新たにする。

人は強くなろうとしてそうなれるのではない。
必要なことを誠実にやっていくことで、何かを実現するための最低限の力が備わる。そういうものだろう。
粛々と進めるだけである。

………

ふたつの海。
クジラのいる海、いない海。
でも忘れちゃいけない。
海はひとつ。
必ずどこかで繋がってる。

燐光群創立35周年記念公演 VOL.1
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燐光群『くじらと見た夢』
作・演出○坂手洋二
http://rinkogun.com/
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国際的な捕鯨問題と日本社会の現状をリアルに描く、鯨捕りに携わる家族たちの「伝承」と「共存」の物語。

佐々木梅治 Benjamin Beardsley 円城寺あや 南谷朝子
中山マリ 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋
杉山英之 東谷英人 武山尚史 山村秀勝 樋尾麻衣子
宗像祥子 田中結佳 秋定史枝 橘麦 中瀬良衣


【岡山公演】
12月19日(火)19:00
岡山市立市民文化ホール
岡山市中区小橋町1-1-30
路面東山行「小橋」下車徒歩1分

全席自由席 18:00より整理券を発行します。
客席開場前にロビーで整理券の番号順にお並び頂き、18:30よりその順にご入場頂きます。

一般前売 2,700円  当日3,000円 
大学生以下 1,500円  ※当日受付にて証明書を提示いただきますようお願いいたします。

http://rinkogun.com/kujira_to_mita_Okayama.html


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新作『くじらと見た夢』、パンフレットに掲載したご挨拶文です。

沖縄でのイルカ(ヒートゥー、ピトゥ)漁は、伝統的なものとして知られているが、戦後の一時期、名護西岸で本格的な捕鯨をしていたことを、最近になって本格的に調べた。十五年近くにわたって、年間数十頭のザトウクジラを捕っていたのだ。昭和二十六年、「戦後初めての捕鯨」と思しき漁にも参加した、八三歳で現役を誇るイルカ撃ち漁師の一家にも、詳しく話を聞いた。

名護東岸、島の反対側に位置する海では、米軍基地キャンプ・シュワブに、普天間基地代替施設としての空港建設が強行されようとしている。この劇の上演が始まる週、大浦湾を埋め立てる石材の、海上輸送による大量投入が始まった。

イルカ漁の豊かな歴史を抱く平和な名護漁港と、米軍基地に占拠された辺野古。同じ名護市なのに、海の風景は、西岸と東岸で、まったく違うのだ。

昨冬、かつて『くじらの墓標』を書くため訪れた捕鯨村・鮎川を、震災後には初めて、再訪した。津波の猛威を受けた町並みはすっかりなくなってしまったが、捕鯨は変わらず続けられていた。

『南洋くじら部隊』の舞台、レンバダ島の捕鯨村ラマレラを、久しぶりに訪れた。電気も電話も貨幣経済もなかった暮らしは近代化の洗礼を浴び、変わってしまった。それでも漁師たちはクジラを捕り続けている。

そして、映画『ザ・コーブ』等によってイルカ漁が国際的な非難を浴びた和歌山・太地に、初めて行った。捕鯨反対運動は沈静化していたが、それとは無関係に、人々は未来を見つめていた。午後から夕方にかけて漁協の退職者たちが集う溜まり場で、九〇歳の元クジラ捕りに話を聞いた。かくしゃくとして、見たところ七十過ぎにしか見えない元気な人で、全世界を股にかけた捕鯨最盛期の話は、圧巻だった。

名護の八三歳、太地の九〇歳との出会いは、収穫だった。

まだだ。
まだ間に合う。
戦争・戦後の時代と、今を生きる人たちを繋ぐ、海の物語を描くことができる。そう思った。捕鯨に携わる家族たちの「伝承」と「共存」の物語が、くっきりと浮上してきた。

これほどさまざまな場所を取材し、あらゆる人々に会ったことはない。四半世紀のあいだ抱えてきた「クジラ」というテーマと、逃れようもなく関わってきた沖縄のことが、このように出会う、宿命。

おそらく今までで一番多く溢れる情報を相手に、井上ひさしさんがよく言っておられた「小説はどんなに長く書いても許されるが、戯曲はどうしても二時間半に収めなければならない」という困難が、立ち塞がった。

しんどい作業に共に立ち向かう仲間たちに、支えられた。そのありがたさ、豊かさに、これほど感謝し、教わった現場も、ない。

クジラを捕ることと演劇を作るという営為は、やはりどこか似ている。

(『くじらと見た夢』当日パンフレットより)
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