新国立劇場『現代能楽集 鵺』トークショーは俳優4氏と演出家、NHK堀尾アナが司会。滅多にこういう場に出ない田中裕子さん登場もあってか超満員だったとか。出席できず申し訳なかったが好評で終わったそうな。……梅雨明けと言われても暑いだけである。イプセン・テキレジは終えたが、これから詰めていくことが多い。イプセンそのものが手強い。4本やろうと考えた自分がどうかしている。『ブラン』日本上演記録は見つからないが、一番最近はいつなのだろう。
さすがに暑い。やるべきことが多い。だからやる。やるのみ。まだまだ冷房に抵抗! ……フランスから連絡。来年以降の企画について。『上演されなかった「三人姉妹」』仏語訳開始。仏版『屋根裏』初日は行けそうにない。もちろんパリ公演には行きたい。が、前回リーディングでの訪問時は夏だったグルノーブル(『白い恋人たち』で知られる冬季オリンピック開催地)2月、銀世界での上演にも惹かれる。どうも冬景色を思い浮かべて暑気払いをしている。
ソウルでは『だるまさんがころんだ』が終わり『屋根裏』追加公演の仕込、舞台稽古という進行。公演は15日から20日、アルコ芸術劇場。ソウル在住の知り合いの方にぜひお知らせ下さい。お見逃しなく。こういう続演ができる柔軟なシステムが日本の公共劇場にもあるといいのだが。……冷房なしを維持しているが、さすがに暑いよ! テキレジはいよいよ『ブラン』を残すのみ。原本は雪山描写が多いが、こちらはある暖房器具が活躍するので、涼しさはない!
さすがに暑くなってきた。しかしまだ冷房は入れない! 都議選結果に、うーむ。民主は候補者をもっと増やしたらどうなっていたか。社民ゼロは仕方ないか。共産党は「蟹工船」と現在をつなぎ損ねた。ともあれ、政党・組合の存在感なき時代の選挙は、ぬるすぎる。「人と人が集まる」という感覚をなくしたマスコミ型「民主主義」の限界。宮崎県知事がたけしに叱られたのは、もっともだが、同時に、なんだかなあ、だが。
今年はまだ在宅で冷房使わず。窓を開けっ放し。梅雨前線の影響で突然風が強くなり驚くことも。半ズボンの季節。新しいサンダルがほしい。……「ノーラ」「ヘッダ」は台本的にはかたまったが、「野がも」「ブラン」テキレジ格闘は続く。イプセン氏との距離がぐっと近づいた気がする。シェイクスピア、チェーホフさんより親しみを覚える。異国の後輩の勝手な言いぐさ。先方にしてみれば、無断で「現代能楽集」にされてしまうとは、「納得いかない」かもしれない。
矢内原美邦マスター本格登場! 「ノーラ」振付始まる。新たな出会いで空間の色が変わってゆく瞬間はエキサイティング。変則的でもある振りを馬渕ノーラはどんどん覚えてゆく。明日は最後の稽古休み。馬渕は『現代能楽集 鵺』『ヘッダ・ガブラー』をはしごするという。タフである! 私が稽古場で何も食べないのを怪しまれ、こんみさに昨日はいなり寿司、今日はおむすびをいただく。ところで、戯曲『現代能楽集 鵺』は、「悲劇喜劇9月号」に掲載されます。
午前中から歯医者、取材、稽古九時過ぎ終える。「ノーラ」集中的に五時間半。馬渕の体力に脱帽。これから本格的に、こんみさ(紺野美紗子)と「ヘッダ」を遊ぶのが楽しみ。ともあれ「舞台は俳優のものである」と再確認。……吉田拓郎さんコンサート中止の報ににうなだれる。歌手がぜんそく性気管支炎に見舞われるつらさは、かなりである。高校のとき自主映画の音楽を作ってくれた小林君がギター片手によく歌っていたのが「明日に向かって走れ」。三十余年前である。
午前中、劇作家協会法人化準備会議。世の中の動きのいろいろに対応せねばならない。稽古は早めに終える。「ノーラ」は人物たちの居所が少しずつ明確に。「ヘッダ」と「ノーラ」の呼応関係も少しずつ確かめてゆく。紺野美沙子さんの差入れで鳥取のスイカを皆でいただく。甘くおいしい。スイカを見るとカブトムシを思い出すが、いずかしゆうすけ説ではスイカを食べ過ぎるとこの虫は溺れて死ぬという。水分が多すぎて身体をこわすということらしい。
ずいぶん映画館に行っていない。考えてみれば関係したもの以外は芝居も観ていない。おそらく当分観られない。とくにイーストウッド新作を二本とも観ていないのはつくづく残念。気がつくとモーニングショーだけになっていたりする。DVDも借りていない。スクリーンで何か観たのは燐光群の伊勢谷能宣主演『浪漫者たち』が最後かもしれない。映画を観ていない歴代ワースト記録はまちがいない。 このまま映画を観ることが習慣の中になくなってしまうのであろうか。
夜中なのに、近隣アパートのカップル痴話喧嘩、あろうことか別方向から二組、同時に延べ十数分、聞きたくもないのに聞こえてくる。内容は聞いちゃいないが、とにかく彼らは近隣迷惑顧みず喧嘩している。訪問男性を追い返そうとしてるらしい組が特にうるさいが、声質は柔らかだ。プライバシーという言葉はどういう方向にあるのか、わけがわからなくなる。俺はイプセンについて考えているのだからな。ああ見えてイプセンは純愛を信じる人なのだぞ。おまえら早く寝ろ。
韓国語の戯曲集が出た。『屋根裏』『だるまさんがころんだ』『上演されなかった「三人姉妹」』収録。……朝の飛行機で帰国。広い稽古場に移動し「ノーラ」「ヘッダ」冒頭からの流れを探る。「せりふの時代」最新号届く。かねてから提案していた短編特集が実現。じつに23篇が並ぶ。私は昨年のフィリピンとの合作『雪を知らない』を出した。在NYで十年前『天皇と接吻』帰国子女高校生役で強い印象を残したオガワ・アヤ書き下ろしも。当分読む暇はないのだけれど。
アルコ芸術劇場〈坂手洋二フェスティバル〉第2弾。若干のカット、時事ネタ・ラスト一部など変えている。砂敷きのセット。真摯な上演。イラクのシーンは韓国軍としてイラク戦争に派兵されていた俳優が演じる。大学路裏にも「地雷汚染立入禁止」の場所あり。地続きの隣国と臨戦の現実感。『ブラインドタッチ』の二人もゲスト出演。昼夜二回アフタートーク出席。昼飯は狂牛病騒ぎのとき韓国で市民権を得たという鳥料理。終演後は『屋根裏』組も参集、懐かしの再会。
稽古場では、「ヘッダ・ガブラー」の魅力を保ちつつ、「生霊としてのヘッダ」を再生させる試みを始める。……さて、羽田空港ロビーでもパソコンを開きっぱなし。国内旅行と変わらぬ距離だが移動だけでけっこう消耗する。都議選周辺状況やら森田健作自民党離党やらのニュースのあまりの「ぬるさ」に呆れ、騒がしい機内隣席のバカップルにうんざり。投宿後、傍の終夜営業食堂でビビン冷麺。忘れていた。韓国の唐辛子入り料理は、基本がハゲシク辛いということを。
振付の上田遥さんにも指摘されたが、第一部「頼政と鵺」は、このまま歌舞伎の台本にもなりそうである。結果的にだが。……さて、矢内原美邦さんと振付相談も始めた『現代能楽集 イプセン』、第一部「ノーラは行ってしまった」のほぼ書き上げていたラスト部分をパソコン上で消失。復元作業を慌てず。復元といえば「ヘッダ」現代能版の中で、テスマンとエルヴステード夫人がエイレルトの本を復元しようとするが、そこについては原本と違うやり方にしている。
連日パソコンに向かっていて、はっと気づくと出かけるべき時間になっている。慌てて飛び出す。こういうサイクルになってくるともう「逃げも隠れもできない」という感じ。いや、べつに逃げたり隠れたりはしていないのだが。……夜『現代能楽集 鵺』ゲネプロ。俳優陣の集中力は増している。多方面で著しい改良。まだまだやれることはある。新国立劇場がフォルクスビューネに見えてくる。演劇実験の国際水準に涼しい顔で着地してほしい。