昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

世田谷東北部の名所めぐり

2009-11-18 13:24:00 | まち歩き

朝から天気がよい。午前中、書類を一枚仕上げて、午後、税務署と社会保険事務所に用事があったので出かけることにしたが、あまりうららかな小春日なので、野暮用だけで済ますのはもったいない気がして、近辺の名刹、名所をめぐってこようという算段で家を出た。まず、梅が丘の北沢税務署で用を済ませ、豪徳寺に足を向ける。境内は平日というのに名所めぐりのグループで賑わっていた。豪徳寺の名物は招福の招き猫である。江戸の昔、豪徳寺は江戸の辺境の荒れ寺として赤貧洗うが如し、どうにも立ち行かない窮状が続いていた。住職は、飼っていた愛猫に「なんとかならんもんかのお?」とつい愚痴っていた。そんな時、幕府の重臣、井伊直孝が遠乗りをしてこのあたりまで来ると、寂れた荒れ寺の前で住職の愛猫が「オイデオイデ」の手招きをした。不思議に思った直孝が寺の中に入ると、にわかに大雨になり、門に雷が落ちた。危険を猫のおかげで免れた直孝は、感じるところがあって、当時、弘徳院といっていたこの寺を菩提寺とし、寄進する寺領そのほか財貨はあまた。この荒れ寺はたちまちのうちに曹洞宗の大刹となったという。そこで寺は猫を珍重し、招き猫として寺の名物とした。寺の仏殿、観音堂を見て、墓地に廻る。古い無縁等、また歴代住職の卵塔を並べ囲った一画がある。無縁の卵塔は、厳しい禅の修業の果て、栄養失調で夭逝した修行僧のものであろう。そのほか弥勒仏、准胝観音などのお像があった。私の好きな童子の墓塔である地蔵菩薩には、真新しい灯篭と水のみがしつらえられていた。無縁ではないのであろう。しかし、これでは興が薄い。朽ち果てていこうとする古色蒼然とした姿が石仏には合っているような気がする。それに対して童女の墓塔は観世音菩薩で、こちらは無造作に置かれていた。このほうが好感が持てる。井伊直弼の墓域は区画整理のため閉鎖されていた。墓地を出てふたたび仏殿の前へ戻る。書院を覗こうとして奥に入ったら、仏殿の後ろに、コンクリート作りの真新しい本堂があった。豪徳寺にはすでに数十回と来ているが、この建築には気づかなかった。うかつといえばうかつだが、かえって気づかないほうがよいような気がした。豪徳寺を出て曹洞宗勝光院に向かう。この寺は山門から鐘楼にかけての豊かな竹やぶが好ましい。山門の前に大振りの地蔵が立っている。関東では野の石仏と言えば地蔵である。人々の地蔵にすがる思いは切実だ。釈迦入滅後、弥勒仏がでるまで地上には仏がいない。そこで、本来、仏になる資格がありながら、あえて仏にならず地上で法を説いて人を救ってくれるのが地蔵だという。また、哀しい地蔵和讃の話も忘れられない。親子の縁が薄く、水子でこの世を去ったり、幼くして死出の旅にたった子どもたちが、賽の河原で一つ積んでは母のため、二つ積んでは父のためと、小石を仏塔の形に積んで、もみじのような手を合わせて拝んでいると、鬼がやってきて容赦なく石の塔を打ち壊す。子たちは何もすることもできず泣き寝入っていると、地蔵菩薩がやってきて子達を衣の下に抱きいれ「今日より後は我こそを冥土の親と思うべし」と言ってくださるという。身をちぎられるような思いで子を送った親としては、地蔵菩薩におすがりしないわけには行かないだろう。勝光院で鐘楼を見た。世田谷で二番目に古い梵鐘だそうだ。見るからに優美な形をしている。ボロ市通り目指して大場代官屋敷に向かう。日も傾きかけてきた。屋敷門と再建された屋敷。白州の跡は移されていた。江戸期の世田谷の歴史を示す大山道、登戸道などの石造の道標がおかれている。郷土資料館に入った。素封家の美術コレクションの特別展をやっていた。展示物は、いずれも幕末期の無名の作家のものだが、絵と書の当時の平均的なレベルの高さには驚かされた。大場代官屋敷裏の浄土宗浄光寺を見た。古い本堂と、観音堂が好ましい。世田谷通りを三茶へ、茶沢通りを通りかえってきた。すき家の隣に東京餃子楼ができている。8月のオープンと言うが、毎週通っていて気がつかなかった。今度入ってやろう。家へ着いたときはすっかり暗くなっていた。

 

    小春日の野辺の仏のぽつねんと     素閑

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