ビールというものはいいものである。なんとまあ、高温多湿の日本の夏には欠かせない飲み物といってよかろう。しかしながら、今年はもう4月も半ば過ぎというのに、一向に初夏どころか、春の息吹も感じさせる天候がこない。こういう陽気のなかでビールを飲んでも美味くない。ビールはなんというか、天気晴朗、空気温暖の中で飲んでこそ、その真価が発揮されるものだと思う。だから冬の寒さの中、室内で縮こまっている風景でビールを飲むのは日本人にはあまりピンとこないイメージだと思う。さて、このビール、起源は紀元前のエジプトでもう作られていたという話だが、いまわれわれが普通に飲んでいるラガービールは、近世になって、チェコのピュルゼニという町で醸造されたのが初めという。それまで上面醗酵の白く濁ったビールをヨーロッパ人は飲んでいたが、ピュルゼニで造られたビールは下面醗酵の黄金色に透き通った色のビール!そしてそのビールの色合いを楽しむために、それまで陶器の器で飲んでいたのが、当時大量生産が始まっていたガラス器で飲むようになったという。さらには、上面醗酵のビールは冷やさずに飲んでいたが、下面醗酵のビールは十分に冷やして飲むことが慣わしとなった。ピュルゼニのビールは「ピルゼンビール」、あるいは「ピルスナービール」として今日に伝えられている。そして、もう一つのピルスナービールの中心地はこれまたチェコのブドヴァル。これはその地名がなんとアメリカのビール『バドワイザー』に受け継がれている。ちなみに、上面醗酵の濁ったビールのメジャーなものとしてはベルギーで産する各種のビールが今日でも一部に根強い人気を保っている。このビールの一人当たりの消費量、チェコが世界でトップだというのはうなずける。今日は季節はずれの寒さも緩んで、久々に暖かな陽気。早めの夕食にまだ残照が残るリビングで久々にビールを飲んだ。
木は芽吹き娘は召し物買いにいで 素閑