テレビ番組『サザエさん』は長寿番組であるとともに、国民的番組でもある。
テレビ放映以前の漫画の『サザエさん』も人気があった。
思えば、高度成長期には『サザエさん』の家庭は日本人の理想であった。
一戸建ての家。三人の子供。三世代同居。専業主婦。入り婿。亭主は職場帰りにカミさんの父親と駅前の居酒屋で一杯。職場からの帰宅後や休日は一家団欒。
そんな余裕は大半の国民にはなかったが、いつか自分もそうなるぞという希望があった。
そして実際に、ある時期には、そうした生活が一部には実現した。
一方、現代をみてみてどうだろう。
男女共同参画、少子高齢化、競争社会、長時間労働・・・・とても『サザエさん』の世界ではない。
『サザエさん』は本当に日本人の理想とする家庭像であり、とても麗しい家族関係のドラマなのだが、もはや現代の我々にはそれを取り戻す術はないであろう。永遠に失われた世界なのだ。
だから日曜の夕方、テレビで『サザエさん』を観て、その描かれた世界に憧れ、懐かしむことで、過酷な競争社会で傷ついた心を癒すくらいが、我々に許された仮象のサンクチュアリへの逃避なのだ。
そう言えば、バブルの時期には『サザエさん症候群』という言葉が流行った。『サザエさん』が放映される時間帯に、サラリーマンが堪らなく憂鬱になることを言うらしい。我々は、今、そういう時代に生きているのが現実だ。
早朝に道掃く主婦居り彼岸過ぎ 素閑
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