行者葫などという野菜を知ったのはいつ頃のことだろうか?
確か、深田久弥さんの紀行エッセイ『瀟洒なる自然』のなかの一節を読んでからだろうと思う。
この中で、深田さんは行者葫を絶賛していた。
当時は、山慣れた人にしか手に入らない、貴重な山菜であったようだ。
しかし、今では、この季節になると、どこのスーパーでも八百屋でも手に入る。
多分、栽培されたものであろう。
葷臭も、深田さんが言うようには強くないようだ。
しかし、オカブにとっては、毎年の季節の味覚になってしまった。
今年も、太子堂の『おおくぼ』で山になって売っていた。一束158円という安さである。二束買った。
家に帰り、味噌をつけて、生で齧り、酒のつまみとした。深田さんの言うような、そんなに美味いという物とも思えない。
しかし、行く春を惜しむ味わいが感傷を誘う。
幼子の手を引く母と燕見ゆ 素閑
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