「大通りの店」 １９６５チェコスロバキア

第二次大戦、ナチス・ドイツ軍占領下のチェコスロバキアの小さな町。
大工のニーノはファシストの義理の弟の計らいで、ユダヤ人の老婆が経営する手芸店の管理人になる。
しかし老婆は耳が遠く、管理人の意味もわからない。
店は品物もほとんどなく、他のユダヤ人の協力で老婆は生活していた。
ニーノはユダヤ人のまとめ役から給料をもらい、老婆をそのままにし、自分はその家の古くなった家具を修理して過ごしていた。
しかし、ユダヤ人の収容所への輸送が決まる。
老婆を隠まって助けたいと思うニーノだったが、「ユダヤ人を助ける者はユダヤ人以下」とリンチを受けたアーリア人を見てしまう。
そして、輸送が始まった時、ニーノの心は葛藤で苦しめられる。



「どうしてこんなことになってしまったんだろう」主人公のニーノが呟いたのと同じ気持ちを誰もが持ってしまうだろう。
ニーノはごく普通の人間らしい人間だったと思う。
大それた欲はなく、自分が平穏に暮らしていけたらいい。そして、困っている人がいたら助けたくなる。そんな当たり前な心を持った人間だった。
だから、高圧的なナチスのこともよく思っていなかった。
自分達（アーリア人）とユダヤ人が違うと言われても、きっとそんな風には思わなかったのだろう。
でも、人間は臆病で、自分が１番大切なのは当然だと思う。
ユダヤ人を連れ去るナチスを見て、葛藤するニーノの気持ちがわかる。
連れ去られたユダヤ人がどうなるか知らないのだから尚更だけれど、不穏な空気を感じていたのも事実だろう。
どうしたら良かったのだろう。
ニーノもおばあさんも、みんなが可哀想だ。
自分がそんな場にいないことを良かったと思ってしまう。
とても辛い映画だった。しかし、これも人間の歴史のなのだ。
映画のひとつの役目として、この様なことを繰り返さない為に、こんなことがあったと言う事を伝え、私達は知る必要があるのだと思う。