「死はすぐそばに」 アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫
CLOSE TO DEATH 山田蘭・訳
ロンドンはテムズ川沿いの閑静な高級住宅地リヴァービュー・クロースで、金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。
門と塀で外部と隔てられた、昔の英国の村を思わせる敷地のなかで6軒の家の住人が穏やかに暮らす――この理想的な環境を、新参者の被害者は騒音やプール建築計画などで乱していた。
我慢を重ねてきた住人全員が同じ動機を持っているこの難事件に、警察から招聘された探偵ホーソーンは……。
<文庫本1頁目より>
「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズ第5弾。
今までの中で1番面白かった。
現在とかつてホーソーンが係わった事件の事が交互に出て来る。
それがスムーズに切り替わるので、混乱することもなく読み進められた。
ホーソーンの事件は、始めはリヴァービュー・クロースの住人がどこに住んで、どういう人たちかという説明で把握しなければならなかったが、見取り図が付いているので助けになった。
丁寧に書いてあるので、それぞれの性格や関係性も良く分かる。
しかし、人間はそう簡単ではなく、立場や見方によって感じ方や人物像も変わる。
最後の謎解きまで行く前に、真相の一部は見えたと思ったら、それ以上の事があり楽しめた。
しかし、これはどうなっているのか、そんなに簡単に出来るのかと疑問に思う事も幾つか。
そして、結末はあまりスッキリした気持ちにはならない。
でも、世の中こんなものかも知れない。
ホーソーンの助手として登場するジョン・ダドリーは助手と言うより、ホーソーンと同等の立場。
ホロヴィッツが気にして、調べ始めるが、それがまたホーソーンと言う人物を知る手掛かりになる。
新たな人物も登場、まだまだ正体の分からないホーソーン。
ホーソーンは相変わらず愛想がないが、今回はホロヴィッツと行動を共にするのではないので、接触が少ない。
2人のやり取りにちょっと物足りなさを感じたりして。
10作の予定というこのシリーズ、まだまだ楽しませてくれそうだ。
今回は密室ミステリーの傑作として、島田荘司「斜め屋敷の犯罪」と横溝正史「本陣殺人事件」をホロヴィッツが挙げていた。
島田荘司さんはまだ読んだことがないので、読んでみたくなった。
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