「特捜部Q カールの罪状」 ユッシ・エーズラ・オールスン ハヤカワ・ミステリ
NATRIUM CHLORID 吉田奈保子・訳
2020年11月30日。
コペンハーゲン警察の殺人捜査課課長のマークス・ヤコプスンが、新聞の死亡広告をカール・マーク警部補に見せる。
死んだのはマイア・ピーダンス、60歳の誕生日に自殺したのだった。
マイアは32年前に起こった自動車修理店の爆発事故に巻き込まれ、3歳の息子マクスを喪っていた。
店主と整備員2人も死亡していた。そして3人の頭部には似たような損傷があったと言う。
当時、最初に現場に駆け付けたのが上級巡査だったカールで、事件はヤコプスンが担当していた。
火災担当鑑識官は出火と爆発の原因を特定出来ず、頭部の損傷も確定出来なかった。
ヤコプスンは当時からこの爆発が事故とは思っていなく、ずっと心に引っ掛かっていたと言う。
そして、マイアの葬儀に参列した後、報告書を読みあれこれ検討したと言う。
その中に“高さ9センチの食塩が盛られていた”と言うのがあった。
カールには塩が絡んだ事件で、未解決なものがあると言う記憶があるが、はっきりと思い出せなかった。
ヤコプスンはカールの特捜部Qに、この事件を調べるように言う。
カールは店主の未亡人に会いに行き、ある不審な事に気が付く。
ローセは昔の報告書から、塩に付いて調べ始め、自殺と結論づけられた過激な発言で有名な国会議員の遺体の側に塩が置かれていた事を発見する。
それは2002年の事だった。
過去の事件を調べていて、それが現在の事件と結びついて行く。
そして、その捜査を邪魔するように、カールが容疑者となる過去の事件が捜査される。
タイトルのカールの罪状はそちらを意識したものなのか知れない。
原題の「NATRIUM CHLORID」は「塩化ナトリウム」なので、そちらの方が合っているかも。
まず、こちらの事件に取り組んで、カールの事件は次作でしても良かったのにと思ってしまった。
これが今回の事件の邪魔になって緊迫感を出したかったのかも知れないが。
なくても緊迫感はあるし、じっくりと取り組める気がした。
今回の事件は犯人が形式に強いこだわりを持っている。
なので、ヒントや調べる事が沢山出て来て特捜部Qのメンバーは大忙し。
強いこだわりは、生活していく上でも窮屈になってしまうのだろう。
確かに、社会のルール違反は許されない事もある。
それを守っている人からすれば、違反する人は許せないだろう。
ただ生活していく上で、誰もが100%ルールを守れるかと言えば、そうではないだろう。
ただ、他人に迷惑を掛けないと言うのは大事。
それを基準にすればいいのではと思ってしまうが、自分が迷惑と思っても、迷惑とは思わない人もいる。難しい。
次作で最後になり、カールの事件「ステープル釘打ち機事件」も解決するのだ。
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