散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

Ambrosia

2005-06-24 20:06:39 | 飲食後記
赤いルビーのようなそれは皿の上でかすかに震えている。
その皿を窓際の雑然とした仕事机の上に置いてしばらく眺めていると、差し込む日差しがその中芯で乱反射して複雑な模様となり、温まってくると同時にそれはほんの少しずつ解けて、赤い汁が皿の上にうっすら溜まってくる。
匙をすくっと入れて引き上げるとそれは匙の上で大きくブルンと揺れ、
唇に触れるとくすぐったいような懐かしいような感触に息を呑む。
ぽいと口の中に一匙を放り込むと舌のうえでそれは人工的な木苺の香をふりまきながら踊りだし、ゆれながら喉の奥にをするりするりと消えてゆくのだ。

“神々の食べ物”(ドイツ名:Goetterspeise、Goetter=神々 Speise=食べ物) → Ambrosia

それは何のことはない、単なるゼリーだ。味よりもまず感触を楽しむ。
誰が命名したものか、良い名前を貰ったものだ。

汗ばむ夏日の昼下がりに宝石のような神々の食物をすくって食べる。