乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

カウナスでツェペリナイ

2012-10-21 | リトアニア
 リトアニア第二の都市カウナスにはケーブルカーが走っているというのでそれに乗るためちょっと寄ってみました。幸いカウナス駅構内にコインロッカーがあったので身軽に歩き回れ助かります。
(ケーブルカーの話はこちらをご覧下さい。)


 このケーブルカーの近くDonelaicio通りに旧市街からカウナス駅に向かうトロリーバスが走っています。ただしカウナスの中心部はトロリーバスの上下線が遠く離れているのでカウナス駅「から」トロリーバスに乗っていく場合は最寄の停留所で降りてもケーブルカーからは結構距離があります。


 ケーブルカーに乗った後トロリーバスを見ながらDonelaicio通りを歩いていたらキレイめのお店にランチの文字が見えました。昼時なので入ってみます。

 入るとまずカウンターでいくつかあるランチメニューから注文しおカネ(7リタス:訪問時約200円)は先払い、食器を取って勝手に席につきあとは料理が出てくるのを待つという形式です。

 まずスープが出たあとほどなくして「ツェペリナイ」が出てきました。

 ツェペリナイはリトアニア料理の定番だそうで、ジャガイモで作った皮でひき肉を包み揚げたものにサワークリームがかかっています。やや油っこいもののジャガイモの風味があるモチモチとした皮の食感はなかなか悪くなく、ボリュームたっぷりでお腹いっぱいになりました。名前の由来は形が飛行船(ツェッペリン)を連想させるからだそうです。

 ところでこの感じどっかで似たものを食べたような、と記憶をたどると、そうだ台湾の肉円(バーワン)だ、と思い出しました。肉円は南国らしくイモはイモでもサツマイモの澱粉で皮を作りひき肉とかタケノコ、シイタケなんかの具を入れて揚げるか蒸すか、というものですから全然接点はないのですが、遠いところで意外なものを思い出すというのはなんだか楽しいものです。

原発の町ヴィサギナス

2012-10-13 | リトアニア
 リトアニアの話ですがラトビアの「鉄話」から始めます。ラトビアのダウガフピルスからリトアニアのヴィリニュスまで国際列車に乗って行こう、と思いラトビアの時刻表を見たら国境を越える列車は早朝発の1便(サンクトペテルブルク発ヴィリニュス行きの夜行列車)しかありませんでした。私は客車より電車・気動車の方が好みで、また比較的ローカルっぽい列車が好きなタチなのでこの手の長距離列車にずっと乗るというのはやや気が進みません。
 改めてダウガフピルスから国境は近いので、例えば国境越えてすぐに降りればリトアニア国内だけのローカル列車に乗れるかも、とリトアニアの時刻表を見たところ案の定気動車の鈍行がありました。じゃ国際列車の国境越えたあと最初の停車駅はどこだろうと改めて時刻表を見るとダウガフピルスの次、30分くらい乗った先の「ヴィサギナス(Visaginas)」とあります。そこで降りると鈍行までの待ち時間は2時間弱後というダイヤです。そのくらいなら時間がつぶせそうだからそこで乗り換えよう、と方針が固まりました。

 さてじゃヴィサギナスってどんなとこだろうと思い検索してみたらなんとここは「1970年代に原発のために作られた町」とのことです。韓国や台湾で路線バスで原発見物なんてふざけたことをやってたからリトアニアくんだりまで行くというのに原発がついてきちゃうのか、幸いと言うべきかヴィサギナスの原発はチェルノブイリ事故後に危険性が指摘され操業を停止し今は稼動していないのですが、今度はここに日立が新しい原発売ろうとしているそうなので日本とまんざら無関係でもありません。ともあれそんな町で時間つぶしをすることになったというわけです。(※その後10月14日に行われた原発建設を問う国民投票では原発反対票が多数となり、同時に行われた国会議員選挙では推進派の与党が第一党から転落し建設計画の見直しがあり得る情勢になったとニュースがありましたが。)

 では前置きは終わりにして実際に寄ったときの話に移ります。ダウガフピルスから乗った列車がヴィサギナスに着いたのはまだ暗いうちです。単線にホームが一本あるだけの小さな駅で拍子抜けしました。原発に向かう引込み線はもっとヴィリニュス寄りから延びていてこの駅は基本的に旅客相手のもののようです。


 町中に出るバスの時間と合わないので白々と明けてきた道を歩くことにしました。本当に何にもない駅前から町まではやけに立派な道路が延びています。日本の原発城下町にある駅だったら「おおこれも『原発マネー』の力かな」などとさっそく思うところですが、社会主義のもと原発のために作られた町ですから計画経済の賜物でしょうか。


 そのうち町らしくなってきたのでキョロキョロ見たところ70年代に作られた新しい町らしく日本のニュータウンとあまり変わらない雰囲気です。西側・東側と言っても案外似たような感じになるものですね。そういえば単に方角だと日本の方が東側かも、などとしょうもないことを考えてしまいました。


 教会が目を引くくらいでボーっとしているとどこにいるのかよくわからなくなってきます。


 申し訳ないけどヘンテコなオブジェめいたものとかも日本にもありそうですし違和感がありません。

 ウロウロしていると実にあっさりした町で、日本の原発城下町みたいに「原子力明るい未来のエネルギー」的な標語の看板の類なんかは全然見当たりませんでした。まあとりあえず稼動してない上、そもそもが原発のために新たに作った町ともなればそんなものをあえて掲げる必要がなさそうではありますが。でもこの町は今どうやって「食って」いるんだろう一回稼動しちゃうと止めても後始末にえらいカネがかかるのが原発ではあるもののと不思議な気がしてきます。

 そのうちに中・長距離バスの乗り場が集まるParkoという通りに着きました。

 参考のため掲示されていた時刻表を大きめのサイズで貼っておきます。


 この附近にいると朝の通勤通学時間帯とみえ近郊バスやタクシー(乗合かもしれません)がどんどんやってきました。またなんだかてっぺんに鳥のくっついた塔が立っています。(ヴィサギナスは湖や湿地が多く鳥が多く棲息しているのだそうです。)

 塔には電光表示もくっつき日付、時間、温度と表示されるのですが、もうひとつ何か表示が出てヘンな単位らしきものが見えます。よく見たらμR/h、つまり「毎時○マイクロレントゲン」という表示でした。原発の町らしいなあと思ったのはこれくらいです。


 ヴィサギナスは湖畔にある町でParkoから南に林を抜けると白樺の映えるヴィサギナス湖が見えます。この辺りは湖が多くこれよりさらに大きい湖が近くにあるためその水を利用しようと原発が立地したのだそうです。


 というところで時間切れになりました。ちなみに原発(稼動をやめたので「跡」とつけるべきでしょうか)そのものは町から7~8km離れたところにあります。日本や韓国の原発はかなり町の近くにあったりしますがこちらは町も新しく作ったところだけに事故に備えて多少は両者を離したのでしょうか。それにしても、もし最初から「そう」と知らないで降りていたらそういう目で見ないので原発の町と気づかないままだったろうなあと思ったヴィサギナスでした。
 だからというわけでもないのですが、最後に町中で見かけた「ここは原発のために作られた町」と書かれた碑でシメます。