乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

ブリュッセル南駅発のエールフランス

2013-10-31 | ベルギー
 ベルギーから東京に帰る日にブリュッセル南駅に出ました。


 このブリュッセル南駅は素晴らしい立地です。なにせ駅から歩いて数分のところにビール蔵があるのですから。しかもベルギーでも稀な古風なビールの造り方を守っているというカンティヨン醸造所です。
 ここを帰る前の最後の楽しみにしようと足を運び外から見ると倉庫みたいなのでどこから入っていいのか悩んでしまいました。とりあえず適当に扉を開けたら造り酒屋・倉庫が中に展開しています。そこに見学コース・試飲スペースが加わるとやや狭さはあるものののんびりした雰囲気で、英語で解説してもらえるのみならず日本の輸入元小西酒造が作成した日本語のパンフレットももらえ大変くつろげました。


 ここの古風な造りというのは決して誇張ではなく、糖化した麦汁に酵母を入れずそこら辺から勝手に入るようにしてアルコール発酵させるという凄さです。なので昔の建物をそのまま利用し蔵の中ではクモの巣はとらず(害虫を食べてくれるから)という具合で、それを数ヶ月・数年という単位で貯蔵したものを適宜ブレンドして出荷するというのですから贅沢というか優雅というかとにかく感心させられました。
 肝心の味は一般的なビールとは全く違う飲み物と言ってもよさそうな発酵臭と酸味の強いもので好き嫌いがはっきりわかれそうです。新酒と古酒、麦だけのものと果実を加えたものなど数種あり、見学の際入場料を払うと2杯まで無料なのですが古風な味わいと旨さに大変感心し追加料金を払って3杯目まで飲んでしまいました。


 お腹だぼだぼの千鳥足でブリュッセル南駅に戻ります。持っていた飛行機の切符はエールフランスのブリュッセル→成田ですが、ブリュッセル空港ではなくこの駅からの切符です。どういうことかというと、エールフランスはTGVとコードシェアしていてブリュッセル南駅からパリのシャルルドゴール空港までのTGVをエールフランス便の飛行機と同じ扱いにするという仕組みになっています。なので駅にはエールフランスのチェックインカウンターがあり、ここで飛行機の切符と同じ体裁のTGVの切符と成田までの切符を受け取ってTGVに乗るという手順です。(ブリュッセル南駅は「ZYR」という空港コード)


 チェックインは発車15分前までで場所が駅だとギリギリまで時間を使いやすいのですが、荷物を預けるのは駅ではなく空港のカウンターなのでそこまで自分で持っていく必要があります。飛行機の乗客となれば荷物が多いので荷物室は大忙しでした。


 乗る列車はコードシェア乗客専用の列車ではありませんが、コードシェア乗客用に1等車が割り当てられエコノミーの切符でも1等利用ということになっています。なのでシャルルドゴール空港駅までの2時間弱は飛行機よりずっと楽でした。(その後2等車を割り当てられることもあったので確実ではないようです。)


 空港に着いたらあとは成田までひたすらくたびれる長い飛行機なので記憶が飛び、京成が古い3500系だったところから覚えています。シャルルドゴール空港まで京成が来ていて乗り換えられればいいのに、などと意味不明なことを考えたりもしました。


 というわけで飛行機と高速鉄道が一緒という便利さに感心した次第です。

韓国~九州乗り継ぎ(5)対馬→壱岐

2013-10-29 | 釜山→対馬→壱岐
(前回のつづきです。)
 今回は対馬の厳原港から壱岐に向かいます。

 厳原港前のバス停名は「桟橋」とごくシンプルです。比田勝港前の「九郵前」とはやや趣の違う名前のつけ方で面白く感じました。

 厳原も比田勝同様に釜山からの国際航路があります。このときは韓国側の会社「未来高速」の「KOBEE(コビー)」が停まっていました。厳原からの高速船は釜山まで所要1時間55分、壱岐(芦辺または郷ノ浦)まで1時間5分、壱岐経由で博多港まで2時間15分(繁忙期運行の直行便は1時間50分)という具合に離島であっても行き止まりでなく「抜けられる」港なのでなんだかワクワクします。


 旅程の都合で厳原をなるべく遅い時間に出ようと思っていたところ、訪問日の高速船は早めの時間に最終便が出てしまうため遅めに出発するフェリーに乗りました。壱岐の郷ノ浦まで2時間5分・博多港まで4時間45分と高速船のほぼ倍の時間がかかるものの、対馬~壱岐間の運賃(燃料サーチャージ込み)は高速船4570円に対しフェリー2等2570円と結構違うので特急券ケチって鈍行で行くような感覚でしょうか。

 乗るのは「フェリーきずな」という昨年登場したという新しい船です。出航前は貨物輸送のためフォークリフトが大忙しでした。乗り込んで2等室に向かうと大変カラフルな座席が目に付きます。

 こちらは2等の桟敷です。

 ちなみに一枚50円で毛布を借りることができます。夜行便でもないのに結構借りている人がいて意外でした。

 船内には各種自動販売機やゲームコーナーのほかに給湯機と冷水機、小さい流しがあってなかなか便利です。

 表にもかなり多く椅子が置いてあります。堅いので長時間はくたびれそうですが夏場は表で過ごすことを選ぶ人も多いのでしょうか。

 とウロウロしているうちに座席も桟敷もがらがらで出航です。寝っころがっていられる桟敷に落ち着くことにしました。道中のお供は厳原の町中で買った「かすまき」(カステラのような生地でアンコを巻いたもの)2本と海苔せんべい(かすまきの甘い生地に海苔を入れて堅く焼いたもの)です。立て続けに食べたらなまじ給湯機があるのでうんと渋いお茶が怖くなり一方手元には普通のペットボトルのお茶だけとちょっと欲求不満になってしまいました。

 ともあれお腹が膨れ桟敷のありがたさでうとうとしていたらあっという間に壱岐の中心郷ノ浦に到着しています。郷ノ浦港は対馬の比田勝港・厳原港に比べ国際航路がないせいかややあっさりした印象です。

 下船後ターミナルビルの観光案内所でパンフレットをもらい博多に向かうフェリーを見送ってから歩いて郷ノ浦の町中に出ました。(郷ノ浦港から郷ノ浦の中心部本町バス停までは1km弱)

 ちなみに郷ノ浦港から町中の本町方面に行く路線バス(壱岐交通)は定期便の市民病院連絡バス(休診日運休)と「博多から到着する」船に接続する随時運行のバスの二種類があります。市民病院連絡バスの最終便が出たあとに「対馬から」着いた私はどちらも利用できなかったので歩いたというわけです。

 というわけで今回は対馬から壱岐に着くまでの話でした。
(つづきはこちらです。)

(韓国~九州乗り継ぎ話一覧)
■(1)釜山→対馬(比田勝)
■(2)比田勝
■(3)韓国展望台
■(4)日本の離島最長路線バス(比田勝→厳原)
■(5)対馬(厳原)→壱岐(郷ノ浦)(このページ)
■(6)郷ノ浦~勝本
■(7)フェリーみしま
■(8)壱岐(郷ノ浦)→唐津
■(番外)福岡・釜山・対馬の麺もの

韓国~九州乗り継ぎ(4)日本の離島最長路線バス

2013-10-24 | 釜山→対馬→壱岐
(前回のつづきです。)
 対馬は南北に細長く、北部の拠点比田勝から対馬の中心南部の厳原まではかなりの距離があります。この間を結ぶのが対馬交通のバス路線「縦貫線」で、便数は一日4往復と少ないものの約85kmを約2時間半かけて走る大物です。おそらく日本の「離島の」一般路線バスとしては最長と思われます。この路線に乗って比田勝から厳原へと南下することにしました。

 比田勝の町中に対馬交通バスの拠点上県営業所があります。ここの停留所名は「比田勝」です。

 敷地にはきちんとした待合室や出札口があり、ここで1000円の一日乗車券「1日フリーパス券」を買っておきました。この切符は対馬島内の対馬交通・対馬市営バス全線に乗れるものですが土・日・祝日とお正月・ゴールデンウィーク・お盆の各10日間限定なので平日は使えません。ただし外国人用は平日も利用可能とのことです。JRの外国人用フリー切符「ジャパンレールパス」などと同様の切符があるのはさすが「日本で一番外国に近いところ」だと感心しました。

 ここから出発するバスはちゃんと待合所前に横付けしてから発車します。

 貸切車両は厚遇されているのか単に待合所前に停車してから発車する必要がないからか道路に面した上屋の下に置かれています。


 ここを夕方に出る厳原行き最終便に乗りました。厳原行きの始発停留所はこの営業所ではなく数百メートル離れた「上対馬病院」で、営業所まで来ると律儀に一旦敷地に入ってちゃんと待合室前から発車します。画像は上対馬病院からやって来たところで、右に見える建物が貸切車両の上屋です。四角い穴から見えるようにツシマヤマネコが描かれた車両がありました。

 この路線はほぼずっと国道382号線を走って行きます。てっきり全線2車線以上に拡張済みかと思っていたらまだ1車線の狭隘区間が散らばっていて意外でした。ただトンネルがいくつも穿たれいわゆる羊腸のような峠越え区間はほぼ解消されているのでごくすんなり走っていきます。


 1時間15分南下した仁位停留所に豊玉営業所があり、ここが縦貫線のほぼ中間地点です。5分ほど停車時間がありここで運転士さんが交代しました。(ここで交代しない便もあるとのことです。)

 営業所は国道を挟んで両側に敷地がひろがっています。


こじんまりとした待合室をのぞいてみたところなかなか良い雰囲気でした。


 仁位を出るとつるべ落としそのままの夕暮れです。対馬はもともと一つのつながった島だったのが二つの運河にちょん切られる形で三つに分かれていて、まず万関瀬戸にかかる万関橋(画像上左)、さらに大船越瀬戸にかかる大船越橋(上右)と渡る頃には真っ暗になりました。
 その後一旦国道から離れ「対馬やまねこ空港」(下左)に寄ると5分停車が挟まるダイヤですがやや遅れて着いたため軽い時間調整程度で出発します。一般の路線バスとは違う塗装の空港シャトルバス(下右)が待機しているのが見えました。

 空港を出るとごくすんなりと郊外然とした道を走りますが、厳原の町中に入る手前で一旦国道を逸れ海沿いの小浦を経由するのでやや目先が変わります。厳原の町中に入るとほどなく着く厳原バス停で降りると比田勝から2時間26分、運賃は3250円にもなり1000円で済む一日乗車券の威力に感謝せずにはいられません。ちなみにせっかく直通しているのに比田勝から通して乗っていたのは私だけだったので(そういえば運転士さんも途中で交代しています)ちょっともったいない気がしました。

 なおこの路線は町の中心にあるこの厳原バス停からさらに5分ほど走った厳原病院が終点で、比田勝側も上対馬病院が始発ですから病院発病院行きということになります。厳原病院に向かうラストスパートを見送って「乗りバス」を終えました。

 厳原バス停前にはショッピングセンターやホール、図書館が入っている複合施設「TIARA(ティアラ)」(対馬市交流センター)があり、韓国語と日本語で書かれた「歓迎・ようこそお越しくださいました。」という横断幕に迎えられるとまだ韓国から着いたような気分が抜けません。釜山~比田勝間の高速船の所要時間が1時間10分なのに対し釜山~厳原間も釜山から1時間55分とやはりバスの比田勝~厳原間より短く韓国がごく近いわけです。


 改めて考えてみると対馬には釜山~比田勝間の「日本最短の国際航路」の隣にそれより時間も距離も長い「日本(の離島)最長路線バス」が走っているというわけでなかなか面白い対比だと思います。

(つづきはこちらです。)

(韓国~九州乗り継ぎ話一覧)
■(1)釜山→対馬(比田勝)
■(2)比田勝
■(3)韓国展望台
■(4)日本の離島最長路線バス(比田勝→厳原)(このページ)
■(5)対馬(厳原)→壱岐(郷ノ浦)
■(6)郷ノ浦~勝本
■(7)フェリーみしま
■(8)壱岐(郷ノ浦)→唐津
■(番外)福岡・釜山・対馬の麺もの

韓国~九州乗り継ぎ(3)韓国展望台

2013-10-22 | 釜山→対馬→壱岐
(前回のつづきです。)
 比田勝の北側へ海沿いに走っていくと20km程度で名所に寄りつつ一周できるのでレンタサイクルで走ってみました。海沿いの道となれば登ったり降りたりの勾配が結構きついのですが電動アシストつきの自転車を借りるとあまり苦もなく走れます。

★殿崎
 比田勝を出て最初に寄ったところは殿崎という岬です。

 日露戦争のとき撃沈したバルチック艦隊の兵隊がここに上陸し地元民は敵ながら世話をした、という故事からいくつか記念碑が建てられています。

 ただそもそもは昔ロシア兵が上陸したというだけの地点ですからそう間はもちません。

 岬はトレッキングコースになっているというので歩いてみました。ただ下草はひどくないものの眺望はきかずクモの巣を払いながら進むことになりスズメバチらしき蜂も見えあまり爽やかな散歩道という感じではありません。その代わりというのか茂みの奥から野生のシカが顔を出すので驚きました。(遠目ですぐ逃げてしまったので写真はありませんが。)突端に抜けると一応眺望は開けるもののわざわざそこまで行くほどかは微妙なところです。


 殿崎を出発すると道々海はキレイで、眺望のきくところではレンタカーで観光している韓国人の家族連れに呼び止められ韓国語で「写真撮ってくれませんか?」と頼まれました。ソウルから来たというのでこっちは東京からと言ったところ韓国人かと思ったとびっくりされむしろこちらがびっくりしたりややこしいものがあります。考えてみればこの日は全く日本人観光客の姿を見ませんでしたから珍しいのはこっちというわけです。ここからの距離は東京よりソウルの方がずっと近かったりしますし。


★三宇田海水浴場
 比田勝の北部には韓国人のツアー客がよく寄るという名所が2ヶ所あります。まずそのうちのひとつ、三宇田海水浴場に寄りました。駐車場に停まっている貸切バスは全て韓国人ツアー客を載せてきたもので、対馬の路線バス会社「対馬交通」の貸切車両も見えなかなかの盛況ぶりです。

 さらに観光客を当て込んでカキ氷やコーヒーを売るクルマも来ていました。


 ここの砂浜には小さな島があり景観がシャレています。私以外見事に全員韓国人観光客で若い子は足まくって島に渡ったりオジサンオバサンの団体は集合写真撮ったりと海水浴シーズンではないものの楽しそうに過ごしていました。


 三宇田海水浴場を出て豊という集落に寄ってみます。沿道には高床式の倉庫が見えました。対馬には屋根が石という大変古い高床式倉庫もあるそうですが、そこまで古いものでなくともなかなか味わいがあります。玉ねぎを軒下でなく床下に吊るして保存しているので感心しました。


★韓国展望台
 もう一つの韓国人ツアー御用達の名所「韓国展望台」に着きました。天気がよければ釜山が見えるという場所です。

 釜山から来たばかりでまたすぐ帰るのにわざわざ釜山を見に行く、というのは何だか妙な感じもします。(気持ちはわかりますが。)駐車場に停まっているのはやっぱり韓国人ツアー客の貸切バスだけでした。


 韓国風の展望台に上がったところ曇っていて釜山は見えずちょっとがっかりです。

 面白いのは観光パンフレットに「韓国の携帯電話会社の電波が受信できます。」とあることで、(携帯電話を持っている)韓国人観光客は天気が悪くとも近さを感じられることになり感心しました。また展望台の中には海図が貼ってあり、釜山まで49.5km、博多まで145kmとこれからも韓国に近いことがよくわかります。


 展望台の脇に立つのは「朝鮮国訳官使殉難の碑」です。

 1703年に朝鮮からの使者と対馬藩士合わせて112名を乗せた船がこの近くで遭難したことを記念するもので、碑前の器には円硬貨とウォン硬貨がごっちゃになって入っていてこの碑にふさわしい気がしました。

 という具合になんだか韓国人ツアー客を追っかけているような名所見物になりました。世界中の観光地で日本人ツアーを見る時代に国内で外国人観光客ばかりの名所があるというのはなんだか面白いものです。また釜山からはるばる国境を越えて(と言っても船で1時間10分ですが)来るには地味な観光地のような気もしましたが、外国だから趣が違えば地味でも楽しいということになるわけで国境は観光名所を生むものというかそのものなのかもしれません。

★ヤマネコと巣箱
 自転車をこいでいるとツシマヤマネコ注意の看板をいくつも見ました。言わずと知れた対馬のシンボル的な存在ではあるものの推定生息数はたった70~100頭と絶滅寸前です。この状況で2012年度の交通事故数は13頭にも達しているというのですから背筋が寒くなりました。

 もう一つよく見かけたのがミツバチの巣箱です。養蜂は採れる蜜量の多いセイヨウミツバチの利用が圧倒的なのに対し、対馬ではセイヨウミツバチによる養蜂が「全く」行われておらずニホンミツバチ(トウヨウミツバチ)のみなのだそうです。巣箱は丸太をくりぬいたどことなくとぼけた趣があるもので、これがあちこちに置かれ景観によい味を出していました。

 野生のツシマヤマネコは数がごく少ないうえ警戒心が強くそうそう見られるものではないそうですが、それでもこの辺りのどこかに棲んでいるのかな…と考えるととりあえずスゴイなあと思ってしまいます。そんな気持ちで巣箱を見ていたらヤマネコは大陸側の朝鮮半島から対馬(あるいは西表島)までの分布で日本本土まで及んでいないのに対し、トウヨウミツバチは朝鮮半島から対馬さらに本土までの分布ということを思い出しやや無理やりくっつけて対馬のボーダーらしさを感じてしまいました。

(つづきはこちらです。)

(韓国~九州乗り継ぎ話一覧)
■(1)釜山→対馬(比田勝)
■(2)比田勝
■(3)韓国展望台(このページ)
■(4)日本の離島最長路線バス(比田勝→厳原)
■(5)対馬(厳原)→壱岐(郷ノ浦)
■(6)郷ノ浦~勝本
■(7)フェリーみしま
■(8)壱岐(郷ノ浦)→唐津
■(番外)福岡・釜山・対馬の麺もの

韓国~九州乗り継ぎ(2)比田勝

2013-10-20 | 釜山→対馬→壱岐
(前回のつづきです。)
 対馬・比田勝港のイミグレーションが入っている「国際ターミナル」は画像のような大変小さい建物で、パスポートに帰国のスタンプを捺された先はすぐに表とあっさりしたものでした。


 出てすぐのところにでっかい韓国語の案内板があります。「帰国」はしたものの、私は釜山は複数回遊びに行ったことがあるのに対して対馬は初めてということもあって釜山より遠いどこかの外国着いた、あるいは釜山近郊にいるという気分です。


 乗ってきた高速船は入国前・出国後の「国外」ですから小さな施設ではあってももちろん乗り場はちゃんとフェンスで隔離されています。


 国際ターミナルのすぐ隣にはやや古びたフェリーターミナルの建物があり観光案内所や土産物を売る売店などサービス施設が入っているので寄ってみました。


 観光案内所では観光パンフレットをもらうと共に「しまとく通貨」なるものを買っておきます。しまとく通貨は長崎県の離島の加盟店で通用するという離島振興用の商品券で、島外からの旅行者のみが買えるというものです。1000円券6枚綴りつまり6000円分の販売額が5000円という大盤振る舞いのうえ加盟店であれば食事や買い物はもとより宿泊にも使えるので使わない手はありません。
 ところでこのフェリーターミナルの建物でトイレを借りたところ「石鹸液の使い方」が韓国語で書かれているのでやっぱり日本なんだなあと思いました。そういえば以前台湾の知人が日本に来て連れションのあと「これどうやって使うの?」と聞いてきたのを思い出したりもします。ということは台湾や韓国にはこのタイプの石鹸液入れはないのか、むしろそもそも日本だけにしかないのかとかちょっと気になるところです。


 ついでに売店に行くと土産物の中に唐突な感じで有名メーカーのごま油の大きなボトルが目立っていました。意外なものにニーズがあるようですね。


 フェリーターミナル前にあるバス停には「九郵前」(九州郵船前の略でしょうか)とありバス停名に「港」とか「ターミナル」が入っていない点が面白く感じます。

 ここを通るバス(対馬市営バス・運行は対馬交通)は一日に循環系統の右回り・左回り各2便ずつの計4便だけなので観光には利用しにくく今回は乗りませんでした。

 さてこうやってだらだらしているうちに韓国人観光客はみんな貸切バスに乗って出発してしまいターミナルはすぐにひと気がなくなります。こちらはどうするかというと徒歩では各名所まで遠く路線バスは便数に難ありなのでレンタサイクルを使うことにしました。レンタサイクル屋さんの送迎車は船の着く時間にあわせてターミナルで待っています。


 さて自転車を借りてざっと比田勝の町を流してみたところ地味で商店の数はそう多くないものの(意外と言っては大変失礼なのですが)近年の日本の地方の町にありがちな暗さを感じませんでした。

 多くの店頭に新しい立て看板が出ていて韓国語の案内もあったりと積極的な雰囲気が感じられそれが明るさにつながっているような気がします。やはり外からの風通しのよさや刺激というのは大事なことなのでしょうね。


 町中には在日本大韓民国民団「民団」の「韓国会館」がありました。民団の事務所の設置基準がどの程度の規模の町までなのかはわかりませんがここにあるとなれば一番本国に近いもののはずです。


 港に近いところにはお土産用の鮮魚等を売るお店があり見事に韓国人観光客向けなので感心しました。海外旅行のお土産に鮮魚抱えて帰るというと妙な気がするものの釜山まで船で1時間10分なら対馬で買った魚を夕食のおかずにすることも無理なくできるわけでいよいよ近さに感心するばかりです。


 という具合に小さい町ながら韓国からの空気がアクセントになっていてなかなか悪くない雰囲気でした。
(つづきはこちらです。)

(韓国~九州乗り継ぎ話一覧)
■(1)釜山→対馬(比田勝)
■(2)比田勝(このページ)
■(3)韓国展望台
■(4)日本の離島最長路線バス(比田勝→厳原)
■(5)対馬(厳原)→壱岐(郷ノ浦)
■(6)郷ノ浦~勝本
■(7)フェリーみしま
■(8)壱岐(郷ノ浦)→唐津
■(番外)福岡・釜山・対馬の麺もの