乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

ポーランド・チェコ国境見物

2013-05-22 | ポーランド
 だいぶ前になりますが昨年の秋にポーランドとチェコが接するシレジア地方の地図を見ていたらなんとなく国境を越える国際列車に乗ってみようという気になりました。そのときに目についたのがにあるポーランドのハウプキ(Chalupki)とオーデル川を挟んで向かい合うチェコのボフミン(Bohumin)にかけての国境路線です。その路線に「乗った」話はこちらに公開しましたが、その国境付近を散歩するのも楽しかったので以下その時の様子を思い出してみます。

 見物の始まりはポーランド側からポーランド鉄道の釣り掛け電車に乗ってハウプキを通り着いたボフミン駅です。

 立派な駅舎の中では車輪に羽根が生えた装飾がいくつも目に付きました。ここを通る路線(ウィーン~クラクフ)を作ったフェルディナンド皇帝北部鉄道(Kaiser Ferdinands Nordbahn)の社章でしょうか。

 現在ポーランドとチェコが接しているこの辺りの国境はその鉄道が通ったころ(1847年)プロイセンとオーストリアの境でした。上述の国際列車が走ってきたポーランド側の路線はプロイセンのヴィルヘルム鉄道(Wilhelmsbahn)が建設したもので1848年にボフミンに達しています。話が逸れますが羽根に車輪といえば日本でも南海の昔の社章がそうでしたがこの発想はどこが元祖でどう広まったのかちょっと興味が湧くところです。
 この駅を出発しようというところでチェコのおカネがないことに気づきます。どちらもEUとシェンゲン協定の中ながら通貨がユーロではない国なので油断していました。島国の民としてはさすが国境越えとどこか風流(?)な気もしなくはないのですがこのあとすぐポーランドに戻る予定なので面倒は面倒です。駅舎内でキョロキョロしたら両替所があったので5ユーロだけチェココルナに両替しました。

 駅前に出るとバス停があります。ここから乗るのは国境ギリギリチェコ側のオーデル川沿いにある町「スターリーボフミン(Stary Bohumin)」というところまでのバス(555系統)です。「スターリー」は古いという意味で日本の地名っぽくすると「元ボフミン」という感じでしょうか。南にボフミン駅ができて駅周辺の方がにぎわうようになり寂れたという流れのようです。


 バスに乗ると10分くらいでスターリーボフミンに着きました。バスが折り返す広場が町の中心でそこを商店などが囲んでいます。あまり賑わいはないものの悪くない雰囲気です。この広場に面したカフェで少し休み、残った(チェコの)小銭をその辺の商店で飲み物やお菓子に使い切ってから国境越えに向かいます。


 国境越えというとなんとなく大仰な感じですがオーデル川にかかる橋を渡るだけですから全然大したことはありません。


 国境を越え渡りきったポーランド側にはそれなりに大きい検問所があったものの何のチェックもなくフリーパスです。ところでオーデル川の国境と言えばポーランド・ドイツ国境(いわゆる「オーデル・ナイセ線」)が有名ですが、それよりずっと上流のここでポーランド・チェコ国境にもなっているとはこの訪問まで知りませんでした。なのでちょっとトクした(?)気分になります。


 検問を越えハウプキの町を歩き出すとすぐに両替の看板が目に付き、その先右手に小さなバスターミナルが見えたので寄るとRaciborz、Wodzislawといった近郊の町に向かう路線が発着しているとありました。


 静かな町を歩いていくと間もなくボフミン行きの国際列車に乗ったとき既に通ったハウプキ駅に到着です。スターリーボフミンからここまで1km半くらいですから大したことはありませんでした。


 ハウプキ駅からはまた列車に乗って北上するのですが、乗る前にもうちょっと散歩することにします。この辺りの国境はオーデル川に沿うだけではなく川から逸れて「地べた」の上にのびる国境もあるので見に行くことにしました。場所はハウプキ駅北方の踏切(路線バスの通る並木道)を東に渡り、そのままずっと歩いていくだけです。踏切から約700m進むと歩いている並木道の左側が急に国境になります。


 上の並木道にぶつかってくる国境を正面から見たところで、左がポーランド、右の畑側がチェコです。国境を示す標石があるくらいで柵などはありません。


 さらに進むと道を挟んでお向かいさんが外国という面白い状況です。

 チェコ側のお宅をのぞくと庭にチェコ側を示す標石が見え一応国境の主張はしています。


 という辺りで乗る列車の時間が迫ってきたのでハウプキ駅に戻りました。あまり国境らしさが感じられないのは行き来自由で気合入れて国境を示す必要がないからでしょうか。物騒なタネになる、というかそもそも物騒の結果というかが国境というものですけれど、どこもこのくらいのんびりしていて欲しいものだとしみじみ思いました。

シンガポールの離島

2013-05-09 | シンガポール
 シンガポール領内にはシンガポール島の周りに離島(というと近いのにやや大仰ですが)がいくつかあります。極端に領土が狭い国なので離島も大事なスペースということになりゴミ処分場や製油所、軍事基地などに「有効利用」されていてあまり遊びに行こうという感じでないところ多いようですがウビン島という島は自然が残り遊び目的で楽しめるというので行ってみることにしました。
 ウビン島への渡船はシンガポール本島の北東のはずれ、チャンギビレッジというところから出ています。シンガポールでチャンギとくればまずは空港、空港があるようなところはだいたい都市の端ですからそのさらに先という立地となるとなんとなく開発が遅れていそうな気がしてきます。
 そういえば以前香港でランタオ島という島に行って野生のピンクイルカや水牛を見ましたが、そこも街外れの空港の先、という立地でしたから元イギリス植民地都市つながりでちょっと似た条件というところが面白く感じました。

 話を戻してチャンギビレッジまではシンガポールの中心地からバスで1時間ほどです。二階建てバス・平屋バスが溜まるバスの折返場があり隣接して商店・飲食店が集まっていました。


 その先すぐに渡船場があります。渡船は乗員定員2名乗客定員12名の小さな船で、特に時刻表はなく乗客が12人が溜まったら随時出発という乗合タクシーみたいなシステムです。ということは12人集まらないといつになっても出発しないことになりますが幸い5分も待たずに集まりすぐ出発できました。


 乗船時間10分ほどでウビン島に到着すると対岸にはシンガポールの街が見えあまり遠くに来た気はしませんが大変のんびりした雰囲気です。


 島内には公共交通がないので自転車を借りて走ることになります。とりあえず道はよく整備されているものの結構起伏があるので日ごろ運動不足の身体には堪えました。いくつも中華している廟がある熱帯雨林という風景は何だか面白くまた妙な気分です。


 アリ塚があるとしみじみ見てしまいます。


 ゴソゴソ音が聞こえるので見るとオオトカゲでした。


 おっちゃんが網もって腰まで泥水に浸かって何かしてます。

 何してるのか聞いたらカニ捕りでした。シンガポールの名物料理にカニの辛み炒め「チリクラブ」がありますがひょっとしてこいつらもいずれ、でしょうか。


 サルも出ます。


 イノシシはちょっと怖いものがあります。


 という具合に自転車に乗ってウロウロしていると色々な野生動物が見られました。マレーシア側の海岸線まで行ったところ海中に柵が延びちょっと無粋な雰囲気ですが国境らしさは感じます。


 さてウビン島観光のひとつの目玉が海沿いに伸びる磯やマングローブを観察するための観光桟道です。ここは自転車では走れず徒歩で見物することになります。ただし行った時間は潮が満ちていたので磯の生き物はあまり見られずちゃんと潮の時間を見ておくんだったと後悔しました。


 海岸の桟道は熱帯雨林見物コースに続いています。このトゲトゲ葉っぱがニッパヤシというやつです。戦時中の「南方」の話に『ニッパヤシで兵舎の屋根を葺き』みたいなシーンが出てきたりしますがこれがそうかと感心しました。「からゆきさん」でも「一兵卒」でもなく遊びで「南方」に行ける時代でよかったと思わずしみじみします。


 森の中には展望台があり上から眺めることも出来ます。


 最後になかなか悪くない風景の内陸の池を見て満足しました。都市国家のシンガポールにこんな熱帯雨林や野生動物が見られる島があるんだなあと感心したところで、そういえばそもそもあのビル群もこういうとこを切り開いた結果なのかと思ったりなんだか社会科見学でもしたような気分です。


 という具合にウビン島見物を終え渡船でチャンギビレッジに戻りバスで都心に出ました。お約束のマーライオンにド派手な夜景、これでもかとわかりやすく繁栄を誇示する雰囲気づくりに感心しつつ、ウビン島からの急な変化に頭の中がなかなかついていけません。



 夕食はチリクラブにしました。チリクラブにはスリランカ産にアラスカ産にといろいろな輸入ガニが使われるそうです。食べながらウビン島で見たカニを思い出し、量はおそらく微々たるものでしょうけれどそれでも狭い都市国家でシンガポール国産ガ二が捕らえられ食べられているということが何だか面白く感じられました。