乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

鹿児島市電

2016-02-15 | 熊本県・鹿児島県
 熊本の「青ガエル」お名残乗車ついでに、というのもなんだか申し訳ないのですが肥薩線経由で鹿児島に足を延ばし市電に乗りました。

 鹿児島市電は丸っこい従来車もいいのですが新しめの車両も広告車ばかりでなく結構「本来の」塗色を見かけるのでホッとします。2100形は車体更新前の都電7000形(私が乗ったのは函館でしたが)のように引き戸の腰にもガラスが入っている点が面白く好感を持ちました。


 さて今回は長らくのご無沙汰で「西鹿児島」だった頃以来になってしまい、初めてということになる「鹿児島中央」駅前で電車を見ていると鹿児島とイタリアのナポリとの姉妹都市関係を記念した「姉妹都市号」がやってきました。せっかくなのでナポリ市電と並べてみます。


 このナポリとの姉妹都市関係の塗装は片方の顔と側面だけです。もう半分を見ると中国の長沙との友好都市関係を記念した塗色になっています。長沙には路面電車はなく地下鉄なので合わせづらいかもしれませんがナポリ市電には連接車もあるのでどうせなら景気よく連接車1本まるごとナポリ市電の塗色にしたら面白いのになどと思ったりもするものの、かつては各都市ごとに1両用意していたのを2つずつまとめてこのナポリ・長沙のような合わせワザになったという台所事情からするとこの手の企画が残っているだけよしとすべきなのかもしれません。


 ちょうど発車時間が近く一日乗車券が使えるというので観光レトロ電車「かごでん」の観光ツアー列車に乗ってみることにしました。動態保存車のお蔵出しのようなものではなくハコは新しく作られたものなので従来からのでっかいダイレクト・コントローラを回し釣り掛け音をたてて走る方に古さを感じるということになりなんだか妙な感じです。それはさておき車内ではボランティアの方の大変丁寧な沿線ガイドが行なわれるので鹿児島中央駅→鹿児島駅→(騎射場経由)郡元→鹿児島中央駅という経路の約70分はあっという間でした。


 「かごでん」で一度通過した神田(交通局前)電停に戻ります。ここの鹿児島市交通局舎内に設けられた資料展示室を見物しました。入室無料という太っ腹な施設です。そう大きくはないのですが単線区間があった時代に使われたイイ味の古い通票を見たりかつてリコ式吊手を使っていたというのでびっくりしたりと楽しめました。


 さらに窓からは車庫と桜島という素晴らしい組み合わせを眺められます。


 ちなみにこの車庫は昨年できた新しいもので前の車庫跡は二中通電停前にまだ残っていました。(車庫があったころの電停名は交通局前)


 郡元から谷山に向かうと専用軌道になり別の乗り味が楽しめます。終端の谷山には「日本最南端の電停」という日本語に英語・簡体字中国語・繁体字中国語・韓国語が添えられたモニュメントがありました。このうち中国語の「電車」に無軌電車すなわちトロリーバスも入ると考えるとちょっと他より意味が大きくなりますが日本にトロリーバスはごく少なくここより南にはないのでそれほど影響はありません。それにしてもこういうものを見ると那覇に戦前のように路面電車あるいはトロリーバスができたら面白いのにと「ゆいレール」がモノレールなのがちょっと惜しくなってしまいます。


 谷山電停のすぐそばを通る指宿枕崎線がちょうど高架工事中なので近寄って見ると「市電上踏切」「市電上第2高架橋」と新旧両方の施設に市電の字が入っているのでちょっと面白く感じました。乗り換え駅や交差はなくとも意外に意識されている(?)ものですね。


 という具合に久々に鹿児島市電にひと回り乗ってみて楽しかったのはもちろんですがセンターポールと芝生軌道は何ともいいものだと改めて感心させられました。分岐のある高見馬場で上を見ても架線だらけにならずスッキリしています。こういうステキな軌道敷がある鹿児島がしみじみうらやましくなってしまいました。

くまがわ・九州横断特急・いさぶろう・はやとの風

2016-02-14 | 熊本県・鹿児島県
 熊本の「青ガエル」にお名残乗車するついでに軽く九州南部を回りたいと思い何かよさげな切符がないかと考えていて「肥薩線一周ぐるりんきっぷ」が目につきました。八代から隼人までの肥薩線は乗り放題、隼人~鹿児島中央~新八代~八代は片道1回のみ乗車可で新幹線・在来線特急の指定席が利用可能という2日間有効のなかなか面白いものです。

 これを使うことにしてまず八代駅から特急「くまがわ」に乗りました。「九州横断特急」なる観光列車用のキハ185系が特急ながらたった2両編成でワンマンというやや頼りない感じの列車です。もっとも乗ってみるとアテンダントの方が案内や車内販売を行ったり記念撮影用の大きなマークを持って回ったりとかなり至れり尽くせり感があって驚かされたのですが。ちなみにこの列車は今年3月のダイヤ改正で消えてしまうので初めて乗るのにお名残乗車になってしまいました。


 「くまがわ」を降りたのは球磨川の谷間にある一勝地です。ここで駅名の字面から特別なデザインの入場券が合格祈願の縁起キップとして売られているのはなるほどというところですが、学生服いわゆる学ランの貸し出しを行っているのはちょっとびっくりしました。てっきり記念撮影用かと思ったら着て付近を散策してもいいとあったので「元」生徒・学生が懐かしい気分を楽しめば良いのでしょう。


 一勝地駅の近くには古風な構えの渕田酒造本店という美味しい球磨焼酎の酒造所があり、その先で芋川という球磨川の支流沿いを上がって行くと「かわせみ」という温泉施設や鬼ノ口棚田とほどよく見どころが続き隣駅には球泉洞も控えているので時間があればそれこそ学ランを借りてゆっくり過ごしたいところです。残念ながら今回は余裕がなく駆け足でざっと見て回っただけで時間切れになってしまいました。


 一勝地駅に戻り今度は「九州横断特急」に乗ります。車両は既に乗った「くまがわ」と同じキハ185系ですが一応この列車に使うのが本来のはずですからこれでちゃんと乗ったというのかさっぱりした感じがしました。と言っても一勝地から終点の人吉までたった14分乗っただけなのですが。


 人吉では駅弁の立売があり駅前に出ると「汽車弁当」という古風な表現が大きく掲げられているのでうれしくなりました。ここからは吉松までの観光列車「いさぶろう」に乗るので観光列車のハシゴということになります。ワンマンながらアテンダントの方も、とこの点は「くまがわ」や「九州横断特急」と同様ですがこちらは普通列車で車両は普通用のキハ40の改造車です。


 人吉の立売に「鮎すし」と「栗めし」がありちょっと迷ったのですが一勝地で買った焼酎をぶら下げていたのでこれに合うのはやはり、と選んだ鮎すしを車内で開けます。


 食べ始めるとすぐにループ線の中にスイッチバックがある大畑に着いてしまいます。停車時間を長めに設けたり眺望の良い場所で停車したりと細かなサービスがあるのが観光列車らしいところで、ループを上がって大畑が見えるところで停車するのは線形がわかりありがたいものです。


 次の矢岳でも停車時間がとられD51が置いてある「人吉市SL展示館」を見物でき、発車すると今度は「日本三大車窓」のひとつというところで停車となると食べたり飲んだり降りたり眺めたりと大忙しになります。


 熊本県から宮崎県に入った次の真幸にもスイッチバックがありしばらく停車時間がとられました。ホームには山津波で流れて来たという大きな石が災害を記念するために置かれています。


 鹿児島県に入ると終点の吉松です。ホームに駅弁の売店があったのでうれしくなり鮎すしを食べたばかりなのについ覗いて1つ買ってしまったのは私の負けと言わざるを得ません。ここで乗り継ぐのは特急「はやとの風」という観光列車で編成は「指宿のたまて箱」用車両もくっついた2両でした。特急と言っても「いさぶろう」同様に普通用のキハ40系を改造した車両なので並んだ両者の同じような顔を見るとやや納得がいかない感じもしますが考えてみれば窓が開けられるのですから実はこの方がありがたかったりもします。


 駅前に出ると保存されているC55のほかに「湧水プリン」「名水コーヒー」の看板が見えこれにも負けてしまい弁当とあわせて両手が食べ物飲み物だらけになってしまいました。


 動き出した「はやとの風」で名前らしきものは「御弁当」というごく明快な定価650円の駅弁を開けるとご飯ずっしりおかずたっぷりの実に安心できる姿があらわれます。もともと「鮎すし」のあとでさらにプリンにコーヒーもとなると当然のことながらかなりの満腹になってしまいました。


 この列車も観光列車らしく肥薩線開業以来の古い駅舎が残る大隅横川と嘉例川でやや長めに停車時間をとります。駅舎はもちろん大隅横川駅前ではC57の動輪、嘉例川駅舎ではネコ、と脈絡のない見物をしました。


 隼人で日豊本線に入ると錦江湾と桜島が見えるようになりいよいよ鹿児島らしくなってきます。今回は西鹿児島→鹿児島中央駅に鹿児島の代表駅をとられてしまったカタチながら今も日豊本線と鹿児島本線の境界のままの鹿児島駅に敬意を表し降りて「はやとの風」を見送ることにしました。先頭に立つ「指宿のたまて箱」用車両の塗色が白黒なのに対し後ろの「はやとの風」用車両は真っ黒なので改めて見るとなんだかカササギとカラスが並んでいるようです。


 という具合にくまがわ・九州横断特急・いさぶろう・はやとの風と4つの観光列車を乗り継ぎ肥薩線経由で八代から鹿児島へ抜け昔の鹿児島へのルートは大変だったんだなあなどと感心したのですが、考えてみれば今は鹿児島本線が肥薩おれんじ鉄道で分断されているので例えば「青春18きっぷ」を使うときのようにJRの在来線だけで抜けようとするとまた肥薩線経由になるのかと気づき妙な気分になりました。因果は巡るというと大げさですが面白いものですね。

熊本の「青ガエル」お名残乗車

2016-02-13 | 熊本県・鹿児島県
 「先代の」とつけなければなりませんが東急5000系は「青ガエル」の愛称がぴったりくる丸っこさや幅の広い片開き扉が好みではあるものの、地方私鉄の釣り掛けを数多く駆逐した走行音が静かな憎い存在でもあり乗るとやや複雑な気分にさせられます。東急時代の5000系には乗ったことがなく乗ったことがあるのは松本や熊本でですから厳密には「東急5000系」に乗ったことはないということになりどうしても地方私鉄の車両という感覚になってしまうわけです。もっとももし青ガエルがなくとも他の車両がどこかから調達されどうせ青ガエルより前の車両には乗れずじまいだったはずですから八つ当たりしても青ガエルに悪いのですが。

 さてその青ガエルも現役なのは熊本電気鉄道の1両となりそれも2月14日で引退するというので乗り直しておきたくなり熊本に行きました。青ガエルが運用についているのは上熊本~北熊本なのでまず熊本駅前から熊本電気鉄道バスの北1系統で北熊本に出ます。この系統は1986年に鉄道が廃止された御代志~菊池を通るので今回はそこまで乗らなくても不思議となんとなく気分が盛り上がるものです。途中市電も見られますし。


 バスを降りて北熊本駅に入ると古豪のモハ71が見えいよいよ勝手に盛り上がります。


 元南海なのに腰ライトのせいで西鉄っぽくなり側面の扉や窓の配置も変わって独特の雰囲気になっている200形もなかなかの見ものです。


 元銀座線01系は帯の色がそのままでパンタグラフがついているので面白く見えます。


 と見物を楽しんでいたら真打の青ガエルがやって来ました。下ぶくれで丸っこい元々の顔はもちろん両運転台化されたときに運転室がつけられた「平面ガエル」顔の側も乗務員室扉がなかったりなかなか味がありますね。


 乗ると下膨れに合わせて曲線になっている扉と戸袋がいいなあとしみじみ見てしまいます。長い吊革には渋谷の109の案内が残り、走り出して大きく揺れると網棚にぶつかってカチャカチャ鳴るのもいい風情です。


 乗るのはだいぶ久々なのですがトンネルの近くにある池田、市電に蔚山町がある熊本だとつい韓国を思い出してしまう韓々坂、JRと市電に接続する上熊本と短いながら変化に富んだ良い雰囲気の区間だと改めて思いました。


 せっかく熊本まで来たのですからついでと言っては申し訳ないのですが青ガエル以外にも乗るため北熊本に戻ります。元都営三田線の6000形に貼ってあったりホームのベンチにいたりと改めて見ると熊本名物のくまモンがなかなかの活躍ぶりです。


 藤崎宮前行きの6000形に乗ると昔の京王マークが入った京王重機の銘板がありなんだかトクした気がしました。


 かぶりついて併用軌道を見つつ藤崎宮前まで乗ります。


 歩いて併用軌道まで戻り今度は道端で見物していたらステンレスの電車ということもあって以前乗りに行ったシカゴから出ているサウスショア線の併用軌道を思い出しました。


 青ガエルお名残乗車を済ませると片開き扉の通勤電車もいよいよ少なくなるなあと寂しくなってしまいますが、幸い保存が予定されているというのでこの点はホッとします。