乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

ホッキョクグマ急行の終点ムースニー

2015-07-26 | カナダ
 暑いので今回は昨年乗ったカナダのポーラーベアエクスプレスすなわちホッキョクグマ急行の北端にある町ムースニー(Moosonee)の話です。ホッキョクグマとなればなんとなく涼しそうな気がするかも、というわけでしばらくお付き合い下さい。(乗り鉄の話はこちらにあります。)
 と始めておいて何ですが、いかにも出そうな列車名なのに沿線にホッキョクグマは生息していないそうです。一応「ポーラーベア州立公園(Polar Bear Provincial Park)」という生息地のひとつから最も近い鉄道とは言えそうですが終点のムースニーから300km以上離れその間を結ぶ車道もなくイメージの列車名という感じでしょうか。(ただし冬季のみAttawapiskatまで道路が開通するそうです。)ちなみにこの列車が走るオンタリオ州の西隣マニトバ州のウィニペグから北へ向かう列車に乗ると2泊3日でチャーチルに着きそこではホッキョクグマが見られるそうなのでそっちの方がポーラーベアエクスプレスの名にふさわしい気がしますが色々事情があるのでしょう。
 ではまずポーラーベアエクスプレス南端の駅コクレーン(Cochrane)のホームです。


 コクレーンでポーラーベアエクスプレスに乗って5時間弱で着くムースニーは鉄道は通じていても車道は他の地域に通じていません。陸路で外部と行き来できる交通機関は鉄道だけというわけでちょっと離島に通じるものがある気がします。地図で見ると北極海から続くハドソン湾から大きく南に切れ込む支湾のジェームズ湾沿いで結構北の果てに着いた感はあるのですが北緯は51度とロンドン並みで実はそれほどでもありません。
 ムースニー駅前からまっすぐのびる目抜き通りはこんな感じです。未舗装でややホコリっぽいのですが一応パラパラと人通りとクルマ通りはありました。


 店の数は少ないものの大きなスーパーがありKFCなどファーストフードも入っているので普段の買い物には困らなさそうです。価格も高くなくごく普通という感じでした。鉄道は通年運行されているので物流もしっかりしていそうです。


 スクールバスやコミュニティバスらしきものも走っていました。


 ムースニーは原住民クリー族の多い地域なのでときおりクリー語が併記されているのを見ることができます。


 駅から目抜き通りを数分歩くとムース川にぶつかり渡船場がありました。ここから出る船は中州にあるムースファクトリー(Moose Factory)という町までのものです。橋はないので船というわけですが冬は川が凍るのでクルマになり、どちらも使えない時期はヘリコプターまで使われたりと渡る方法が変わり大変そうです。特にあてもないのでせっかくだからと乗ってみたところ運賃は1人片道15ドルと結構なお値段ではあるものの誰かと乗合になっても1人でも同じ運賃ですぐに出発するので便利でした。


 茶色い水の川が広がる景色は普段せせこましいところで生活している身にはスケールが大きくなんだか凄いところに連れて行かれそうな気がしましたがぶっ飛ばす船に乗ることわずか5分ちょっとで地味なムースファクトリー側の船着場です。


 船着場の近くには病院があり救急ヘリも見え頼もしいものがあります。


 その先にはパラパラと人家が見えときおりクルマが走るもののごく静かです。


 地味なガソリンスタンド兼スーパーというか大きいよろず屋みたいな店に入ると奥の売り場には家具やスノーモービルまで置かれていてたまげました。ケンタッキーとピザハットの持ち帰りカウンターもあります。


 町の中に昔(18世紀半ば以降)の建物が保存されている野外博物館的な一角がありました。海の凍らない時期に北のハドソン湾を通って行き来する船の発着地点として1637年にハドソン湾会社によってムースファクトリーの町が作られ、対岸のムースニー側が町になったのはずっと後になってからだそうですが今は南からの鉄道のみならず空港や港もムースニー側にあり外部との玄関になっています。


 ハドソン湾会社が建てた教会や社員寮も名所とされ立札が立っていました。


 ムースファクトリーをひと回りしたところでムースニーの対岸側の川面を眺めてみます。そう華やかな景色でもないもののここから下っていくと間もなくジェームズ湾にハドソン湾と続き先は北極海につながっているんだなあと考えるとちょっとありがたい気もしとりあえず納得したのでまた船とポーラーベアエクスプレスに乗って南のコクレーンに戻りました。


 なおポーラーベアエクスプレスは他の定期旅客列車に接続がありません。なのでコクレーンから大都市に出るにはこんな感じに便数の少ないバスを乗り継ぐ必要があり不便ですが人口が希薄な地域なので公共交通網があるだけありがたいとも思うところです。
 というわけで暑い日にホッキョクグマや北極海、ハドソン湾という字面を出し涼んだ気になった(?)ところで話を終わりにします。

カナダのアメリカの路面電車レストラン

2015-01-12 | カナダ
 カナダ一の大都市トロントを代表する空港は中心部の北西にあるピアソン国際空港(Toronto Pearson International Airport)です。この空港と市街地を直接結ぶ鉄道はないので公共交通を利用するならバスということになります。(トロントの中心部ユニオン駅までの鉄道「Union Pearson Express」が建設中)
 ピアソン空港を発着するバスのなかで目立つ系統は地下鉄2号線の西端キプリング(Kipling)駅発着の192番で、「エアポート・ロケット(AIRPORT ROCKET)」という愛称がつき車内に荷物スペースが設けられた車両が使われやや特別扱いという感じです。と言っても運賃は一般の地下鉄・路面電車・市内バスと共通の均一体系内なので特に高価ということはありません。またキプリング駅のバス停は地下鉄ホームの直上にあり地下鉄と共通の改札内になっていて乗り換えは上下移動だけという便利さです。


 さて件の192番でピアソン空港に到着しました。乗る飛行機はアメリカのシカゴ行きです。


 この空港でアメリカ行きの飛行機に乗る時は手順がちょっと変わっているので戸惑いました。カナダは入国審査はあっても出国審査というものがありません。なのでここから国際線に乗る場合は出国審査なしで飛行機に乗ることになるのですが、アメリカ行きに乗る時はひとつ手順が増えます。それはまだカナダの空港なのにアメリカの入国審査官がいて入国審査を受けるということで、これを済ませ既にアメリカに入国した身にならないと飛行機に乗れません。そのためアメリカの空港に着いた時は入国審査を受けずに済みます。
 そんなわけでカナダにいながら既にアメリカにいることになり、搭乗までにまだ時間があったので食事をすることにしました。どこにしようかと歩いていたら「レッド・ロケット(Red Rocket)」なる店が目に入ります。


 店の看板にはかつてトロントの路面電車で使われていたPCCカーが描かれていました。店内はポールや架線などを模した装飾が並び寄らずにはいられない感じです。


 ちなみに現物のトロントのPCCカーはこんな車両(トロント郊外の電車博物館の動態保存車)で、アメリカのケノーシャでは同型車が営業運転されています。


 席についてメニューを見るとオンタリオ湖産鱒の燻製入りハッシュというのがあったのでビールと一緒に頼んでみます。出てきたのはカムジャジョン(韓国料理)みたいな感じのもの、では余計わかりにくいかもしれませんが潰したジャガイモと鱒を混ぜてお好み焼状に焼いたものです。ビールによく合い、これはマッコルリも合うかな…などと考えながら電車ムードの店内でつまむのは楽しいひとときでした。


 韓国を連想したのは前日コリアタウンに行ったからかもしれません。トロントには韓国系住民が多くコリアタウン付近のみならず韓国語で話す人やハングルをよく見かけました。


 独立系(?)のイーマートなんてのもあったくらいです。


 ついでながら中国系住民は韓国系住民より多くチャイナタウンもあります。チャイナタウンで土豆猪骨湯すなわちカムジャタンの店が看板を出しているとなるとカナダの中国の韓国でしょうか。


 そんなわけでトロントは東京から遠いところながら「(東京の)ご近所さん」が多く馴染みやすい街という印象です。

カナダの長距離バスの休憩場所

2015-01-10 | カナダ
 昨年カナダに行きオンタリオ州内だけで乗り鉄しました。(乗り鉄話はこちらをご覧下さい。)
 州内「だけ」と言ってもオンタリオ州は日本の国土の約2.8倍の広さがあり、一方人口は日本の1割くらいです。そんな土地柄だけに旅客鉄道も長距離バスも路線網が粗く頻度も少なく1日1往復あればまだしも週に3往復とかになると思い付きの途中下車など考えにくいものがあります。また駅は周りに何もなかったりそもそもリクエストしないと駅に停まらなかったりで列車に一度乗ると乗りっぱなしになりがちでした。
 その点長距離バスの場合は休憩のための停車があります。ゆったり乗れる列車に比べバスは窮屈なので休憩なしではキツ過ぎるという面もありますが、それだけにありがたみもひとしおです。今回はそのバスで休憩した場所を見ていきます。

 まずトロント(Toronto)からサドバリー(Sudbury)までグレイハウンドのバスに乗った時の休憩場所です。高速道路(料金所はなし)から一度降りて停まったのはファーストフード店が集まるフードコートでとりあえずありがちな感じでしょう。

 ちなみにこのバスの行先表示には遥か彼方のバンクーバー(Vancouver)と出ていたので驚いたら、実際には途中のウィニペグ(Winnipeg)止まりでバンクーバーに行く場合は別のバスに乗り継ぎとのことでした。とは言えトロントからウィニペグまでだけでも31時間かかり、ウィニペグからバンクーバーまでは35時間、トロント→バンクーバーの道のりは4000kmを超え考えただけでぞっとします。(トロント→サドバリーは5時間半)


 次はホワイトリバー(White River)からスーセントマリー(Sault Ste. Marie)まで乗ったグレイハウンドの休憩場所です。上述のバスと同じ路線の逆方向、ウィニペグ→トロントの途中にあたります。休憩場所と言っても五大湖のひとつスペリオル湖がよく見える場所に駐車場があるというだけで売店や食堂はありません。

 ちょうど湖に夕陽が沈む時間でした。買い物などはできないもののこういうところで休憩をとるというのはイキですね。


 こちらはコクレーン(Cochrane)からノースベイ(North Bay)まで乗ったオンタリオノースランド(Ontario Northland)のバスが寄ったアールトン(Earlton)という町。駐車場ではなく道端に停車しての休憩時間です。

 ファーストフードではなく大衆食堂といった感じの店なのはうれしいのですが、休憩は15分しかないので乗客は軽食類をテイクアウトし車内で食べることになります。またレジにはバスの乗客へのアルコール販売は禁止されていると断り書きがありました。オンタリオ州は公共の場での飲酒や種類の販売規制が厳しいのですが、ここは酒類の規制がゆるいケベック州に近い場所なのでこんな表示が必要なのかもしれません。


 最後は同じくオンタリオノースランドでノースベイからトロントまで移動する途中での休憩場所Gravenhurst駅です。駅舎がカフェに改装されたもので旧出札口には鉄道関係グッズの展示コーナーがあります。

 様々な焼き菓子に飲み物とどれも美味しそうです。せっかくカナダに来たんだからとメイプルシロップのカプチーノを頼んだら上品な甘さの美味しいものでした。こういうところだと休憩というよりこれ自体目的地という感じで短い休憩時間なのが残念です。


 というように休憩場所には結構変化があり、サービスエリアとかドライブインのようなところばかりではなかったので意外でした。