乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

韓国~九州乗り継ぎ(3)韓国展望台

2013-10-22 | 釜山→対馬→壱岐
(前回のつづきです。)
 比田勝の北側へ海沿いに走っていくと20km程度で名所に寄りつつ一周できるのでレンタサイクルで走ってみました。海沿いの道となれば登ったり降りたりの勾配が結構きついのですが電動アシストつきの自転車を借りるとあまり苦もなく走れます。

★殿崎
 比田勝を出て最初に寄ったところは殿崎という岬です。

 日露戦争のとき撃沈したバルチック艦隊の兵隊がここに上陸し地元民は敵ながら世話をした、という故事からいくつか記念碑が建てられています。

 ただそもそもは昔ロシア兵が上陸したというだけの地点ですからそう間はもちません。

 岬はトレッキングコースになっているというので歩いてみました。ただ下草はひどくないものの眺望はきかずクモの巣を払いながら進むことになりスズメバチらしき蜂も見えあまり爽やかな散歩道という感じではありません。その代わりというのか茂みの奥から野生のシカが顔を出すので驚きました。(遠目ですぐ逃げてしまったので写真はありませんが。)突端に抜けると一応眺望は開けるもののわざわざそこまで行くほどかは微妙なところです。


 殿崎を出発すると道々海はキレイで、眺望のきくところではレンタカーで観光している韓国人の家族連れに呼び止められ韓国語で「写真撮ってくれませんか?」と頼まれました。ソウルから来たというのでこっちは東京からと言ったところ韓国人かと思ったとびっくりされむしろこちらがびっくりしたりややこしいものがあります。考えてみればこの日は全く日本人観光客の姿を見ませんでしたから珍しいのはこっちというわけです。ここからの距離は東京よりソウルの方がずっと近かったりしますし。


★三宇田海水浴場
 比田勝の北部には韓国人のツアー客がよく寄るという名所が2ヶ所あります。まずそのうちのひとつ、三宇田海水浴場に寄りました。駐車場に停まっている貸切バスは全て韓国人ツアー客を載せてきたもので、対馬の路線バス会社「対馬交通」の貸切車両も見えなかなかの盛況ぶりです。

 さらに観光客を当て込んでカキ氷やコーヒーを売るクルマも来ていました。


 ここの砂浜には小さな島があり景観がシャレています。私以外見事に全員韓国人観光客で若い子は足まくって島に渡ったりオジサンオバサンの団体は集合写真撮ったりと海水浴シーズンではないものの楽しそうに過ごしていました。


 三宇田海水浴場を出て豊という集落に寄ってみます。沿道には高床式の倉庫が見えました。対馬には屋根が石という大変古い高床式倉庫もあるそうですが、そこまで古いものでなくともなかなか味わいがあります。玉ねぎを軒下でなく床下に吊るして保存しているので感心しました。


★韓国展望台
 もう一つの韓国人ツアー御用達の名所「韓国展望台」に着きました。天気がよければ釜山が見えるという場所です。

 釜山から来たばかりでまたすぐ帰るのにわざわざ釜山を見に行く、というのは何だか妙な感じもします。(気持ちはわかりますが。)駐車場に停まっているのはやっぱり韓国人ツアー客の貸切バスだけでした。


 韓国風の展望台に上がったところ曇っていて釜山は見えずちょっとがっかりです。

 面白いのは観光パンフレットに「韓国の携帯電話会社の電波が受信できます。」とあることで、(携帯電話を持っている)韓国人観光客は天気が悪くとも近さを感じられることになり感心しました。また展望台の中には海図が貼ってあり、釜山まで49.5km、博多まで145kmとこれからも韓国に近いことがよくわかります。


 展望台の脇に立つのは「朝鮮国訳官使殉難の碑」です。

 1703年に朝鮮からの使者と対馬藩士合わせて112名を乗せた船がこの近くで遭難したことを記念するもので、碑前の器には円硬貨とウォン硬貨がごっちゃになって入っていてこの碑にふさわしい気がしました。

 という具合になんだか韓国人ツアー客を追っかけているような名所見物になりました。世界中の観光地で日本人ツアーを見る時代に国内で外国人観光客ばかりの名所があるというのはなんだか面白いものです。また釜山からはるばる国境を越えて(と言っても船で1時間10分ですが)来るには地味な観光地のような気もしましたが、外国だから趣が違えば地味でも楽しいということになるわけで国境は観光名所を生むものというかそのものなのかもしれません。

★ヤマネコと巣箱
 自転車をこいでいるとツシマヤマネコ注意の看板をいくつも見ました。言わずと知れた対馬のシンボル的な存在ではあるものの推定生息数はたった70~100頭と絶滅寸前です。この状況で2012年度の交通事故数は13頭にも達しているというのですから背筋が寒くなりました。

 もう一つよく見かけたのがミツバチの巣箱です。養蜂は採れる蜜量の多いセイヨウミツバチの利用が圧倒的なのに対し、対馬ではセイヨウミツバチによる養蜂が「全く」行われておらずニホンミツバチ(トウヨウミツバチ)のみなのだそうです。巣箱は丸太をくりぬいたどことなくとぼけた趣があるもので、これがあちこちに置かれ景観によい味を出していました。

 野生のツシマヤマネコは数がごく少ないうえ警戒心が強くそうそう見られるものではないそうですが、それでもこの辺りのどこかに棲んでいるのかな…と考えるととりあえずスゴイなあと思ってしまいます。そんな気持ちで巣箱を見ていたらヤマネコは大陸側の朝鮮半島から対馬(あるいは西表島)までの分布で日本本土まで及んでいないのに対し、トウヨウミツバチは朝鮮半島から対馬さらに本土までの分布ということを思い出しやや無理やりくっつけて対馬のボーダーらしさを感じてしまいました。

(つづきはこちらです。)

(韓国~九州乗り継ぎ話一覧)
■(1)釜山→対馬(比田勝)
■(2)比田勝
■(3)韓国展望台(このページ)
■(4)日本の離島最長路線バス(比田勝→厳原)
■(5)対馬(厳原)→壱岐(郷ノ浦)
■(6)郷ノ浦~勝本
■(7)フェリーみしま
■(8)壱岐(郷ノ浦)→唐津
■(番外)福岡・釜山・対馬の麺もの

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