前回(→こちら)につづいて、デヴィッド・フィッシャー『スエズ運河を消せ』を読む。
第二次世界大戦中、ドイツ軍に苦戦を強いられる祖国を助けようと、戦場へ志願した手品師ジャスパー。
使い道の今ひとつ見えない彼は、仲間たちと
「カモフラージュ実験分隊」
を組織するわけだが、その最初の任務というのが実にイカしていて、
「部族の長老と手品で対決してこい!」
手品で対決!
敵はすぐそこまでせまっているのに、そんなTVチャンピオンみたいなことをやっていていいのかとコケそうになるが、これが一応はまじめな任務。
なんでも砂漠の地上戦を戦うのに、撤退路にいる部族の長老(「自称」超能力者)が、
ワシ、イギリス人嫌いなんや。よそから来た植民地野郎のくせに、デカい顔しよってからに。
ウチの土地に入ってきたら、背後から一発カマしたるさかい覚悟しさらせよ!
そう息巻いているからだが、そこを
「手品で黙らせてこい!」
というのだから、なんとも安気な話である。
もちろん、英軍は必死なのではあるが。
そんなシビれるようなワザのかけあい(もちろん、長老の使う「超能力」はすべてただの手品です)を制したジャスパーは見事、軍に貢献できたわけだが、実際ここから彼の部隊は主にカモフラージュを武器として快進撃を続けることになる。
その内容は実際に本を読んでもらうとして、ここは勝手にサブタイトルをつけて、さわりだけでも紹介するなら、
第一話「結成! 我ら最強の文化系軍団!」
第二話「炎のマジックバトル! 砂漠の仙人のフェイクを暴け!」
第三話「がらくた集めて大戦争! 4万リットルのペンキを探せ!」
第四話「天翔る鷲を欺け! アレクサンドリア移動作戦」
第五話「必殺鏡地獄! なに? スエズ運河が消えただと!」
第六話「最終決戦! ロンメルも脱帽、やったぜダンボール戦車部隊の大勝利!」
なぜかノリが特撮モノみたいになってしまったが、そう、この『スエズ運河を消せ!』はまさにこういった
「少年冒険モノの王道」
な展開が、大いなる読みどころであるのだ。
物語の構成を整理してみると、
1 ユニークな設定
2 キャラの立った仲間たちと、その魅力的なエピソード
3 思いもかけない大活躍
4 挫折とあやまち
5 苦悩とそれを乗りきる転換点、仲間との絆、使命の重要性、そして再出発
6 最後の決戦と大団円
教科書通りというか、そのまま少年マンガやジュブナイル小説の創作指導に使えそうなチャート表になる。
そら、おもろいはずですわ、と。
笑いあり、浪花節あり、痛快な勝利と傷ついた男の回復の物語でもある。
徹夜で一気は必至。私のような「ジャンプ黄金時代」世代はぜひ読むべし!