海外で詐欺であう詐欺師って気づかないものなの? その2 イタリアのローマ&タイのバンコク編

2020年12月16日 | 海外旅行

 前回(→こちら)の続き。

 ローマのテルミニ駅周辺で、白人青年に道をたずねられ、お礼に「知人のやってるバー」に誘われた。

 それに対しては、

 

 「ただの気のいい青年

 「絶対アヤシイ。なにか目論見があったにちがいない」

 

 意見がわかれたのだが、このカラクリが解けたのは、その数年後におとずれたスペインでのこと。

 ユースホステルで日本人旅行者たちと仲良くなったのだが、そこにいたトノツジ君という青年が、

 

 「いやあ、ローマではヒドイ目にあいましたよ」

 

 話を聞くと、なんでも悪辣イタリア人にだまされて、ボッタクリバーに連れていかれたのだという。

 ひとしきり酔っ払って、勘定書きを見るとそこには「1000ユーロ」(だいたい10万円くらい)の記載があって青ざめたという。

 なにやら、どこかで聞いたような話だが、私も事態を薄々察しながら、

 

 「それって、テルミニ駅の場所を訊かれへんかった?」

 「そうですよ」

 「で、あなたはイタリア人かっておどろかれた」

 「なんで知ってるんですか?」

 「で、そのさわやか男子が、お礼をしたいからバーに案内するって言い張るんや」

 「千里眼あらわる! マジでエスパーじゃないですか?」

 

 もちろん私が清田君というわけではなく、同じ鴨なんばんだったというだけのことだ。

 テルミニ駅から、知人のバー。流れるようにトレースしている。

 もし病気の連れがいなければ、こちらも同じ目にあっていたわけであろう。

 で、そんときはどうしたの、と続きを問うならば、払えないというと奥から屈強なボクサーみたいな男が出てきて、小便ちびりそうになったと。

 彼がタフなのは、泣きながら金を出すフリをして、相手が油断したスキにダッシュで逃亡したこと。

 なんとか事なきを得たそうだが、まったくヒドイ目にあったと、ボヤきにボヤきまくりだ。

 そりゃ、災難やったねえ。ほんでさ、ひとつ気になることがあるんやけど、「イタリア人か?」って訊かれたとき、どう思った?

 

 「あー、ヨーロッパ人に間違われて、うれしかったですねえ」

 

 やっぱり、あれは「お世辞」やったんや。てか、そんなに日本人って「イタリア人」にあこがれてるものなの?

 なんて笑ってられるのは自分が無事だったからで、あのときはまったく疑ってなかったのだから、他人事ではない。

 ちなみに、このとき「怪しい」と喝破した同行者も、後年友人とアジアを旅行したとき、

 

 銀行の場所を教えてくれないか? それと、わたしは日本お金興味があるから見せてほしい」

 

 インド人(の扮装をしてるだけかもしれないが)らしき夫婦に声をかけられ、一緒にいた友人に、

 

 「無視して。ガイドブックとかに書いてる、典型的な詐欺やから」

 

 そう、耳もとでささやかれたとか。

 その通り、これは「を見せてくれ」(というのも考えてみればな要求だが)といって、1万円札を出したところ、観察するフリをしながら巧妙に小額紙幣とすり替えるという、一種のスリなのだ。

 これには同行者も、

 

 「いやあ、全然わからんかった。ただのいい人にしか見えへんかったもん」

 

 この経験以来、私は詐欺に引っかかる人のことを

 

 「わからんかったんかい!」

 「そんな簡単な手口、気づけよ」

 

 と思うことはなくなった。

 これはねえ、将棋とか好きな人ならわかると思うけど、他人がやってるところを観ているといい手や冷静な対応がいくらでも思い浮かぶのに、その局面を自分が「対局者」としてプレーすると、何も見えなくなる

 それと同じで、詐欺も情報として見ると

 

 「なんでこんなもんに」

 

 となるけど、実際あったら話術巧みだし、人当たり抜群にいいしで、相当に見抜くことなどできないのだ。

 そりゃまあ、プロが本気になって、しかも無防備な外国人をねらうのだから、そもそも「戦力」に差がある。

 だまされても、それは不注意のみとも言い切れないのだ。

 こういうことがあると悲しいのは、もちろんお金を取られた被害もさることながら、その土地印象がどうしても悪くなってしまうこと。

 前回の三井さんの記事のように、

 

 「本当に申し訳ないけど、今はインド人が詐欺師に見えそうです」

 

 ということになっても責められないし、実際私もスペインで出会った別の日本人旅行者とフラメンコを見に行ったら、その帰りに、

 

 「すいません、最初はあなたのことを疑ってました。詐欺かなにかじゃないかって。こっち来てスペイン人はおろか、日本人にもだまされて、なんだか人間不信におちいってしまって……」

 

 なんて告白されて(当時のマドリードはメチャクチャに治安が悪かった)、ただでさえ詐欺はいかんのに、ましてや同胞をだますなんてと義憤に燃えたものだが、そういうこともあるのだ。

 なんにしろ、一度だまされると

 

 「悪い人はあくまでごく一部で、ほとんどがふつうの人

 

 という当たり前のことに紗がかかってしまう。

 旅行者にとっては下手すると、金銭よりもそっちの損害の方が多いかもしれず、そのためにも最低限の備えはしておきたいものだけど、手当たり次第に疑うのは、それはそれで失礼

 また「いい出会い」のチャンスも逃してしまうかもしれないから、むずかしいところではあるなあ。

  

 

コメント
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