読書日和

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「白河夜船」吉本ばなな

2007-04-03 17:42:45 | 小説
白河夜船」(著:吉本ばなな)を読みました。
本屋で見かけたときは題名が読めませんでした。
しらかわよふね」と読むようです。

-----内容-----
いつから私はひとりでいる時、こんなに眠るようになったのだろう―。
植物状態の妻を持つ恋人との恋愛を続ける中で、最愛の親友しおりが死んだ。
眠りはどんどん深く長くなり、うめられない淋しさが身にせまる。
ぬけられない息苦しさを「夜」に投影し、生きて愛することのせつなさを、その歓びを描いた表題作「白河夜船」の他「夜と夜の旅人」「ある体験」の”眠り三部作”。



白河夜船
主人公・寺子の恋人は植物状態の妻を持つ既婚者。
完全な不倫とも言えない微妙な関係です。
この作品は淡々と読みました。
なかなか寺子の考えが理解できなかったからです。
恋人と会っていると寂しい気持ちになり、それが眠りにつながっていくのがいまいちわからなかったです
ただ、寺子がほとんど一日中寝てしまった後の霊体験が興味深かったです。
最初は死んだ「しおり」だと思いました。
でも「私のせいで疲れているような気がして…」の台詞で、この人が恋人の妻の霊なのだとわかりました。
なぜ寺子が疲れているのかは、恋人の心が寺子だけのものではない焦りがあるからだと思います。
眠りを扱う小説は読んだことがなかったので新鮮な感じがしました。




夜と夜の旅人
作品全体に沈んだ空気を感じます。
主人公が誰なのか掴めないです。
作者も誰が主人公かを明確に位置づけていないのではと思います。
芝美の兄・芳裕が死んだことにより、芳裕の恋人だった毬絵が夜中に徘徊するようになる、というのが話の中心のようです。
この作品でも霊体験に近いものが出てきますね。
毬絵は恋人が死んだ深い悲しみでそうなったのだと思います。
でも最後の終わり方は希望の持てるものだったので良かったです。



ある体験
これが一番面白かったです。
主人公はアルコール依存症になりかけの女の子です。
寝るときになると、不思議な歌声が聞こえてきます。
それはかつての恋敵、「春」の呼びかけだったのです。
春の死を知った主人公は、謎の霊媒師の力で春と会うことになります。
そこは灰色の空間に囲まれた小さな部屋。
この霊世界がとても興味深かったです。
文字だけなのに情景を深く思い浮かべることができて、吉本さんてすごいなと感じました。

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