読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「宵山万華鏡」森見登美彦

2010-08-13 11:22:15 | 小説


今回ご紹介するのは「宵山万華鏡」(著:森見登美彦)です。


-----内容-----
祇園祭宵山(ぎおんまつりよいやま)の京都。
熱気あふれる祭りの夜には、現実と妖しの世界が入り乱れ、気をつけないと〈大切な人〉を失ってしまう―。
幼い姉妹、ヘタレ大学生達、怪しげな骨董屋、失踪事件に巻き込まれた過去をもつ叔父と姪。
様々な事情と思惑を抱え、人々は宵山へと迷い込んでいくが…!?
くるくるとまわり続けるこの夜を抜け出すことは、できるのか。

-----感想-----
この作品は京都を舞台に世にも不思議で面白可笑しい、そしてときにヒヤリとする物語が繰り広げられていきます。
京都が舞台だけあって和風テイストさが最大限発揮されています
祇園祭、宵山などという言葉がたくさん出てくるので、読んでいて何となくワクワクさせられました
祇園祭は言わずと知れた日本有数のお祭りですね
宵山というのは祇園祭の本祭(毎年7月17日に行われる)の前夜に行われる祭りのことで、本祭に次ぐ観客動員数を誇るとのことです。
この宵山の日が物語の核になっていて、色々な人が宵山で不思議な体験をしていきます。
森見さんの独特な世界観もあり、とても幻想的な雰囲気になっていました

今回も森見さんらしい謎めいた言葉がたくさん出てきました。
「超金魚」に「奥州斎川孫太郎虫(おうしゅうさいかわまごたろうむし)」など。。。
特に奥州斎川孫太郎虫については、そんな虫いるわけないだろと思って試しにネットで調べてみたら。。。いました。
まさか実在するとは思いませんでした(笑)
奥州斎川孫太郎虫、正体を知りたい方はこちらをどうぞ。
ちなみに作中ではこれの幼虫が食用としてまさかの串焼きになって出てきますが、私はとても食べる気にはなりません
一応現実世界でも漢方薬として用いられたり、食べられたりもしてはいるようです。

この作品は「夜は短し歩けよ乙女」とも少しリンクしています。
あのときに上映されたゲリラ演劇「偏屈王」の製作に関わっていた人たちが出てきました。
この人たちが、世にも恐ろしい「恐怖の宵山」を作り上げていくのですが、ちょっとギャグテイストになっていて面白かったです^^

「うまくいくかね」
「大丈夫だってば。相手は馬鹿だもん」
「おまえもな」
「君もな」

こんな感じで、サクサクッと進んでいく会話がウケました。
後でカラクリが分かってみると実にくだらない企みなのですが、その場面を読んでいるときはすっかり本物の物の怪かと思わされてしまいました
作品中には何度か本物の妖しの世界が垣間見えるだけに、どれが現実でどれが妖しなのか、段々分からなくなってきます。
両者が入り乱れて、独特の妖しい世界観を作り出している感じです
これが森見さんの持ち味なのだろうなと思います

そしてこの作品全体でも、各短編が少しずつリンクしています。
あるところまで読んでいくと、「あれ、これは前の話に出てきたあれじゃないか?」と気になり、その部分を確かめに読み戻りたくなるような小説です。
この微妙なリンクのさせ方が上手いなと思います。
このあたりは伊坂幸太郎さんに通じるものがありますね。
夏の夜にピッタリの、お祭りの湧き立つ雰囲気と肝試しの妖しい雰囲気を合わせ持った、面白い小説でした


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。